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Youngの不等式とその証明を紹介します.



⇨予備知識

・対数の底が $e$ のとき,$\log_e$ と書かずに $\ln$ と書きます.(これはかなり一般的な用法です) つまり,$\ln a$ は $\log_e a$ のことです.
・ 指数関数の性質
$$a=e^{\ln a}  (a>0\ \text{のとき})$$ $$\ln ab =\ln a+\ln b  (a,b >0\ \text{のとき})$$ $$\ln a^b=b\ln a  (a>0\ \text{のとき})$$ ・ Jensen の不等式



Youngの不等式とは

解析学で広く用いられている以下の絶対不等式をYoungの不等式 (ヤングの不等式)といいます.高校数学で役に立つことはほぼないと思いますが,大学で学ぶ解析学では基本的で有用な不等式です.

Youngの不等式: $a,b$ を正の実数とし,実数 $p,q$ が $p,q > 1$, $\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=1$ を満たすとき,次の不等式が成り立つ. $$ab \le \frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}$$

具体例

・$a=1,b=2$ ,$p=q=2$ とすると, $$ab=2,\frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}=\frac{1^2}{2}+\frac{2^2}{2}=\frac{5}{2}$$ なので,確かに $2 \le \frac{5}{2}$ となります.

・$a,b$ のいずれかが正でない場合は,一般には成り立ちません.たとえば,$a=-3,b=1,p=3,q=\frac{3}{2}$ とすると, $$ab=-3,\frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}=\frac{(-3)^3}{3}+\frac{1^{\frac{3}{2}}}{\frac{3}{2}}=-\frac{25}{3}$$ なので,$-3 >-\frac{25}{3}$ であるから,Youngの不等式は成り立ちません.

・また,$p,q >1$ が満たされていない場合も,一般には成り立ちません.たとえば, $a=\frac{1}{2},b=1,p=-1,q=\frac{1}{2}$ とすると, $$ab=\frac{1}{2},\frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}=\frac{\left(\frac{1}{2}\right)^{-1}}{-1}+\frac{1^{\frac{1}{2}}}{\frac{1}{2}}=0$$ なので,$\frac{1}{2} > 0$ であるから,Youngの不等式は成り立ちません.

・さらに,$\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=1$ が満たされていいない場合も,一般には成り立ちません.たとえば, $a=b=3,p=q=\frac{3}{2}$ とすると, $$ab=9,\frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}=\frac{3^{\frac{3}{2}}}{\frac{3}{2}}+\frac{3^{\frac{3}{2}}}{\frac{3}{2}}=4\sqrt{3}$$ なので,$9 > 4\sqrt{3}$ であるから,Youngの不等式は成り立ちません.

したがって,Youngの不等式の成立のためには,$a,b$ は正の実数,$p,q > 1$, $\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=1$ という条件はいずれも必要です.

特徴

・$p=q=2$ のときは,$2$ 変数の相加相乗平均の不等式になります.実際このとき,Young の不等式は $$ab\le \frac{a^2+b^2}{2}$$ という形になりますが,これは相加相乗平均の不等式です.

・Young の不等式は,重みつき相加相乗平均の不等式の特別な場合にもなっています.

・Young の不等式の最も有名な応用として,ヘルダーの不等式の証明に使われます.

・一般化したYoungの不等式というものがあります.

Youngの不等式の証明

Youngの不等式は,指数関数の性質とJensen の不等式を用いて証明できます.

証明:  $$ab=e^{\log_e ab}  (ab> 0 \ \text{より})$$ $$=e^{\log_e a+\log_e b}$$ $$=e^{\frac{1}{p}\log_e a^p+\frac{1}{q}\log_e b^q}$$ $$\le \frac{1}{p}e^{\log_e a^p}+\frac{1}{q}e^{\log_e b^q}  (\text{Jensen の不等式より})$$ $$=\frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}$$

練習問題

 $a,b$ を正の実数とするとき, $$ab \le \frac{a^2+b^2}{2}$$ が成り立つことを示せ.

→solution

$p=q=\frac{1}{2}$ としてYoung の不等式を用いれば良い.

 任意の正の実数 $\epsilon$ に対して, $$ab\le \epsilon a^2+\frac{b^2}{4\epsilon}$$ が成り立つことを示せ.

→solution

$$ab=((2\epsilon)^\frac{1}{2})a)\left(\frac{1}{(2\epsilon)^\frac{1}{2}}b\right)$$ 右辺に,$p=q=\frac{1}{2}$ として,youngの不等式を適用すれば, $$\le \epsilon a^2+\frac{b^2}{4\epsilon}$$ を得る.

 $a,b,c$ を正の実数とし,実数 $p,q,r$ が $p,q,r > 1$, $\frac{1}{p}+\frac{1}{q}+\frac{1}{r}=1$ を満たすとき,次の不等式が成り立つことを示せ. $$abc \le \frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}+\frac{c^r}{r}$$

→solution

Young の不等式を $2$ 度用いればよい.
まず,$a,bc$ と,$p,\frac{p}{p-1}$ ($\frac{1}{p}+\frac{1}{\frac{p}{p-1}}=1$ に注意)に対して,Young の不等式を用いると, $$abc=a(bc)\le \frac{a^p}{p}+\frac{(bc)^{\frac{p}{p-1}}}{\frac{p}{p-1}}$$ $$=\frac{a^p}{p}+\frac{p-1}{p}b^{\frac{p}{p-1}}c^{\frac{p}{p-1}}$$ つぎに,$b^{\frac{p}{p-1}},c^{\frac{p}{p-1}}$ と, $\frac{p-1}{p}q,\frac{p-1}{p}r$ ($\frac{1}{\frac{p-1}{p}q}+\frac{1}{\frac{p-1}{p}r}=1$ に注意)に対して,Youngの不等式を用いると, $$\le \frac{a^p}{p}+\frac{p-1}{p}\left( \frac{\left(b^{\frac{p}{p-1}}\right)^{\frac{p-1}{p}q}}{\frac{p-1}{p}q}+\frac{\left(c^{\frac{p}{p-1}}\right)^{\frac{p-1}{p}r}}{\frac{p-1}{p}r}\right)$$ $$=\frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}+\frac{c^r}{r}$$