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絶対不等式のうち,最も重要な相加相乗平均の不等式について解説します.




相加相乗平均の不等式

相加相乗平均の不等式: $n$ 個の実数 $x_1,x_2,...,x_n$ がすべて $0$ 以上のとき,次の不等式が成り立つ. $$\large \frac{x_1+x_2+\cdots+x_n}{n} \ge \sqrt[n]{x_1x_2\cdots x_n}$$ 等号成立条件は,$x_1=x_2=\cdots=x_n$ のときである.

不等式の左辺は $n$ 個の実数の和を $n$ で割ったもので,相加平均(または算術平均)と呼ばれます.通常,単に平均という場合は相加平均を意味していることが多いです.一方,右辺は $n$ 個の実数の積の $n$ 乗根で,相乗平均(または幾何平均)と呼ばれます.

つまり,不等式の主張は,相加平均は常に相乗平均以上であるということです.また,この不等式が等号となるのは $x_1=x_2=\cdots=x_n$ のときに限ります. 相加相乗平均を用いるときの注意点は,平均をとる $n$ 個の実数がすべて $0$ 以上でなければ使えないということです.

・$n=1$ のとき
不等式は $x_1 \ge x_1$ となるのでこれが成り立つのは明らかです.

・$n=2$ のとき
与えられた不等式は $$\frac{x_1+x_2}{2} \ge \sqrt{x_1x_2}$$ となります.$n=2$ の場合は特によく用いられるので重要です.

2つの場合の証明

$n=2$ の場合の相加相乗平均の不等式を証明します.これは簡単に示すことができます.

$x_1 \ge 0,x_2 \ge 0$ とします.このとき, $$\left(\frac{x_1+x_2}{2} \right)^2 -(\sqrt{x_1x_2})^2=\frac{1}{4}(x_1-x_2)^2 \ge 0$$ であり,$\frac{x_1+x_2}{2} \ge 0,\sqrt{x_1x_2} \ge 0$ なので, $$\frac{x_1+x_2}{2} \ge \sqrt{x_1x_2}$$ です.

一般の場合の証明

一般の $n$ の場合については,様々な証明方法が知られています.ここでは数学的帰納法を用いる方法を紹介します.少し証明が入り組んでいるのですが,使っていることは基本的な不等式の知識のみです.

証明: 数学的帰納法で示す.
まず,$n=1$ のとき,(左辺)=(右辺)となるので不等式が成り立つことは明らか.
つぎに,$n$ 個の場合について,相加相乗平均の不等式が成り立っていると仮定して,$0$ 以上の実数 $x_1,x_2,\cdots,x_{n+1}$ について, $$\frac{x_1+x_2+\cdots+x_n+x_{n+1}}{n+1} \ge \sqrt[n+1]{x_1x_2\cdots x_nx_{n+1}}$$ が成り立つことを示す.

(1) $x_1=x_2=\cdots=x_n=x_{n+1}$ のとき:
明らかに (左辺)=(右辺) なので,この場合はOK.

(2) $x_1,x_2,\cdots,x_{n+1}$ のうち,$0$ であるものがひとつ以上あるとき:
$(右辺)=0 $ となりこの場合もOK.

(3) (1),(2) 以外のとき,すなわち,$x_1,x_2,\cdots,x_{n+1}$ がすべて等しくはない正の実数のとき:
$$\frac{x_1+x_2+\cdots+x_n+x_{n+1}}{n+1} > \sqrt[n+1]{x_1x_2\cdots x_nx_{n+1}}$$ を示せばよい.
さて,いま,$x_1=x_2=\cdots=x_n=x_{n+1}$ ではないので, $$\alpha=\frac{x_1+x_2+\cdots+x_n+x_{n+1}}{n+1}$$ とおくと,$x_1,x_2,\cdots,x_n,x_{n+1}$ のうち,$\alpha$ より小さいものと,$\alpha$ より大きいものが少なくとも一つずつある$^{(*)}$.必要ならば添字をつけかえることによって,$x_n > \alpha,x_{n+1} < \alpha$ としてよい.

ここで,$y=x_n+x_{n+1}-\alpha$ とおくと,$y \ge x_n-\alpha >0$ . $$n\alpha=x_1+x_2+\cdots+x_{n_1}+x_n+x_{n+1}-\alpha$$ $$=x_1+x_2+\cdots+x_{n-1}+y$$ なので, $x_1,x_2,\cdots,x_{n-1},y$ の $n$ 個の実数に相加相乗平均の不等式を用いると,$\alpha^n \ge x_1x_2\cdots x_{n-1}y$ となる.したがって, $$\alpha^{n+1}=\alpha\alpha^n \ge x_1x_2\cdots x_{n-1}y\alpha$$ さらに, $$y\alpha-x_nx_{n+1}=(x_n+x_{n+1}-\alpha)\alpha-x_nx_{n+1}$$ $$=(x_n-\alpha)(\alpha-x_{n+1}) >0$$ なので,$x_1,x_2,\cdots,x_{n-1}$ はすべて正より $$x_1x_2\cdots x_{n-1}y\alpha >x_1x_2\cdots x_nx_{n+1}$$ 結局,以下の不等式が成り立つ. $$\alpha^{n+1} >x_1x_2\cdots x_nx_{n+1}$$ よって,数学的帰納法より,すべての $n$ に対して 相加相乗平均の不等式が成り立つ.

($*$) について: $x_1,\cdots,x_{n+1}$ について,$x_1=x_2=\cdots=x_{n+1}$ ではないとき,仮に $x_1,x_2,\cdots,x_{n+1}$ がすべて $\alpha$ 以下であれば, $$\alpha=\frac{x_1+x_2+\cdots+x_n+x_{n+1}}{n+1} \le \frac{(n+1)\alpha}{n+1}=\alpha$$ となりますが,この等号が成立するのは $x_1=x_2=\cdots=x_{n+1}$ のときなので仮定より $\alpha < \alpha$ となり矛盾します.同様に,$x_1,x_2,\cdots,x_{n+1}$ がすべて $\alpha$ 以上としても矛盾します.よって,$x_1,x_2,\cdots,x_{n+1}$ のうち,$\alpha$ より小さいものと,$\alpha$ より大きいものが少なくとも一つずつあることになります.