$3$ 点が同一直線上にあるための条件|思考力を鍛える数学

平面上の $3$ 点が同一直線上にあるための条件を複素数を用いて表します.

複素数平面上で,$3$ 点が同一直線上にあるための条件はつぎのように簡潔に表すことができます.ここでは,状況を簡単にするために $3$ 点は相異なるとしておきます.

$3$ 点が同一直線上にあるための条件: 複素数平面上の相異なる $3$ 点 $A(\alpha),B(\beta),C(\gamma)$ が同一直線上にあるための必要十分条件は, $$\large \frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}$$ が実数になることである.

$\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}$ は $A,B,C$ の座標のみで表せる値です.したがって,$3$ 点の座標がわかっているとき,この値を計算して,それが実数かそうでないかを判断することにより,$3$ 点が同一直線上かどうかを判別することができます.つまり,$3$ 点を図示することなく,代数的な計算のみで幾何学的な情報を知ることができる便利な公式なのです.

・$A(0),B(1+i),C(3+3i)$ とすると,$\frac{(3+3i)-0}{(1+i)-0}=3$ は実数なので,$3$ 点 $A,B,C$ は同一直線上にある

・$A(2+i),B(3+5i),C(4+2i)$ とすると,$\frac{(4+2i)-(2+i)}{(3+5i)-(2+i)}=\frac{2+i}{1+4i}=\frac{6-7i}{17}$ は実数でないので,$3$ 点 $A,B,C$ は同一直線上にない

注意

$3$ 点が同一直線上にあるかどうかは,$A,B,C$ の位置に無関係な条件です.したがって,その必要十分条件も当然そうなっているはずなので,条件式の $\alpha,\beta,\gamma$ の位置を入れ替えてもよいです.つまり,式中の $\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}$ を $\frac{\alpha-\beta}{\gamma-\beta}$ や $\frac{\alpha-\gamma}{\beta-\gamma}$ などに変更しても同じです.実際,下の $6$ つの式のうちどれかひとつが実数ならば,残りのすべても実数になることが容易に示されます. $$\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha},\frac{\beta-\alpha}{\gamma-\alpha},\frac{\alpha-\beta}{\gamma-\beta},\frac{\gamma-\beta}{\alpha-\beta},\frac{\beta-\gamma}{\alpha-\gamma},\frac{\alpha-\gamma}{\beta-\gamma}$$

この公式の証明は意味を考えれば容易に理解できます.

証明: 『$A(\alpha),B(\beta),C(\gamma)$ が同一直線上にある』 $\Leftrightarrow $ 『$\angle BAC=0$ または $\angle BAC=\pi$』 $\Leftrightarrow $ 『$\arg \frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}=0,\pi $』

$\Leftrightarrow $ 『$\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}$ が実数』

この証明をもう少し詳しくみてみましょう. 『$A(\alpha),B(\beta),C(\gamma)$ が同一直線上にある』 $\Leftrightarrow $ 『$\angle BAC=0$ または $\angle BAC=\pi$』 は明らかです.つぎの同値関係は複素数の考え方に慣れていないと戸惑うかもしれません.

まず,$3$ 点 $A,B,C$ を $A$ が原点にくるように平行移動した点をそれぞれ $A’,B’,C’$ とします. すると,それぞれの座標は,$A'(0),B'(\beta-\alpha),C'(\gamma-\alpha)$ となります.

平行移動しただけなので,$\angle BAC=\angle B’A’C’$ です.このとき, $$\angle B’A’C’=\arg (\gamma-\alpha)-\arg (\beta-\alpha)=\arg \frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}$$ が成り立ちます.

したがって, 『$\angle BAC=0$ または $\angle BAC=\pi$』 $\Leftrightarrow $ 『$\angle B’A’C’=0$ または $\angle B’A’C’=\pi$』 $\Leftrightarrow $ 『$\arg \frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}=0,\pi $』 となります.さて,証明中の最後の同値関係は,$\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}=re^{i \theta}$ と極形式で表すと,$\theta=\arg \frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}$ なので, 『$\arg \frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}=0,\pi $』 $\Leftrightarrow $ 『$\theta=0,\pi$』 $\Leftrightarrow $ 『$\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}$ が実数』

となります.以上より,$3$ 点 $A(\alpha),B(\beta),C(\gamma)$ が同一直線上にあるための条件は $\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}$ が実数になることです.

実は先の公式では,$3$ 点が同一直線上にあるかどうかだけでなく,その位置関係まで判断することができます.つまり,$A,B,C$ がどの順番で直線上にならんでいるかどうかを判別することさえできるのです.まず,$A,B,C$ の位置関係は,どの点が真ん中に来るかを考えると全部で $3$ 通りあります.($A,B,C$ と $C,B,A$ などのように,逆からみて一致する並びはここでは同一視します)

$3$ 点の順序: 同一直線上の相異なる $3$ 点 $A(\alpha),B(\beta),C(\gamma)$ に対して,次が成り立つ.
$$\large (i)\ \frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha} < 0\ \text{のとき}\ B,A,C \ \text{の順に並ぶ}$$ $$\large (ii)\ 0< \frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha} < 1\ \text{のとき}\ A,C,B \ \text{の順に並ぶ}$$ $$\large (iii)\ \frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha} >1 \ \text{のとき}\ A,B,C \ \text{の順に並ぶ}$$

たとえば下図の例を見ると,$\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}$ の値と $3$ 点の位置関係の公式が実際に成り立っていることが確認できます. ($i$) $\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha} < 0$ のとき,$B,A,C$ の順

($ii$) $0< \frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha} < 1$ のとき,$A,C,B$ の順

($iii$) $\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha} > 1$ のとき,$A,B,C$ の順

この公式はつぎのように説明することができます. まず,$(A,B,C),(A,C,B),(B,A,C)$ の $3$ 通りの並びの中で,$\angle BAC=\pi$ となるのは $(B,A,C)$ だけです.残りの $(A,B,C),(A,C,B)$ は $\angle BAC=0$ となることに注意してください. ($i$) のとき,$\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}=re^{i \theta}$ と極形式で表すと,これが実数であることから,$\theta=0,\pi$ ですが,$\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}< 0$ なので,$\theta=\pi$ です.したがって,$3$ 点の並びは $B,A,C$ の順です.

($ii$) のとき,$3$ 点の並びは $(A,B,C)$ または $(A,C,B)$ です.条件式より,$\gamma-\alpha < \beta-\alpha$ です.これは,$A,B,C$ を $A$ が原点にくるように平行移動した点をそれぞれ $A’,B’,C’$ としたとき,$C’$ の方が $B’$ よりも $A’$ に近いということを表しています.したがって,$3$ 点の並びは $A,C,B$ の順です.

($ii$) のとき,$\beta-\alpha < \gamma-\alpha$ です.これは,$A,B,C$ を $A$ が原点にくるように平行移動した点をそれぞれ $A’,B’,C’$ としたとき,$B’$ の方が $C’$ よりも $A’$ に近いということを表しています.したがって,$3$ 点の並びは $A,B,C$ の順です.

注意

$\frac{\gamma-\alpha}{\beta-\alpha}=0,1$ の場合については何も触れませんでした.実は,これらの場合は,$3$ 点のうちいずれか $2$ つが同じ点になり,$3$ 点が相異なるという仮定に矛盾するので,最初から考えていません.

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