3点が正三角形の頂点となるための条件|思考力を鍛える数学

複素数平面上で $3$ 点が正三角形の頂点となるための条件を紹介します.

複素数平面上の $3$ 点 $P(z_1),Q(z_2),R(z_3)$ が正三角形の頂点となるための必要十分条件は, $$\large (z_1-z_2)^2+(z_2-z_3)^2+(z_3-z_1)^2=0$$

複素数を用いると,正三角形の成立条件が上のように非常に美しく表せます.上の等式は展開すると, $$z_1^2+z_2^2+z_3^2-z_1z_2-z_2z_3-z_3z_1=0$$ と同値になります.たとえば,$P(0),Q(1),R(\frac{1+\sqrt{3}i}{2})$ とすると,$△PQR$ は一辺の長さが$1$ の正三角形になります.実際,上の条件に代入してみると, $$(0-1)^2+\left(1-\frac{1+\sqrt{3}i}{2}\right)^2+\left(\frac{1+\sqrt{3}i}{2}-0\right)^2=1+\left(\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}\right)+\left(\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right)=0$$ となって,条件式を満たしていることがわかります.このように,$3$ 点の座標がわかれば,上の式を用いて簡単に正三角形であるかどうかチェックすることができます.

平行移動と回転操作を行うことによって先の命題を証明してみましょう.平面上に正三角形 $PQR$ があるとき,$P,Q,R$ の並びが,時計回りに $P→Q→R$ となっている場合と,$P→R→Q$ となっている場合の $2$ 通りの可能性があります.一気に両方の場合を考えるのは大変なので,それぞれの場合について考えて,$2$ つの結果をあわせる方針で行います.

証明: 以下,図形の形は平行移動,回転移動によって変わらないことに注意する. (I) $3$ 点 $P,Q,R$ が時計回りに $P→Q→R$ と並んでいる場合 $P(z_1),Q(z_2),R(z_3)$ を $P$ が原点にくるように平行移動すると,それぞれの点は, $$P'(0),Q'(z_2-z_1),R'(z_3-z_1)$$ となる.$3$ 点 $P’,Q’,R’$ が正三角形となるためには,原点を中心として $R’$ を $60°$ 回転したとき,$Q’$ に一致することが必要十分条件である.したがって, $$(z_3-z_1)\left(\frac{1+\sqrt{3}i}{2}\right)=z_2-z_1$$ となる.したがって, $$\sqrt{3}i=\frac{2(z_2-z_1)}{z_3-z_1}-1 ・・・①$$ (II) $3$ 点 $P,Q,R$ が時計回りに $P→R→Q$ と並んでいる場合 上と同様に考えると, $$(z_3-z_1)\left(\frac{1-\sqrt{3}i}{2}\right)=z_2-z_1$$ となる.したがって, $$-\sqrt{3}i=\frac{2(z_2-z_1)}{z_3-z_1}-1 ・・・②$$

①,②の両辺を $2$ 乗するといずれも, $$-3=\left(\frac{2(z_2-z_1)}{z_3-z_1}-1\right)^2$$ となる.逆に,この式から①または②が導かれる.この式を展開して整理すると, $$(z_1-z_2)^2+(z_2-z_3)^2+(z_3-z_1)^2=0$$ となる.

さて,上で述べたように,複素数平面上の $3$ 点 $P(z_1),Q(z_2),R(z_3)$ が正三角形の頂点となるための必要十分条件は, $$\large (z_1-z_2)^2+(z_2-z_3)^2+(z_3-z_1)^2=0 ・・・(A)$$ でした.ところで,$P(z_1),Q(z_2),R(z_3)$ が正三角形の頂点となることと,$3$ 辺 $PQ,QR,RP$ の長さが等しいことは同値です (ただし,いずれの辺の長さも $0$ より大きいとする).したがって,条件 (A) は, $$\large \left|z_1-z_2 \right|=\left|z_2-z_3\right|=\left|z_3-z_1 \right| ・・・(B)$$ と等しくなるはずです.実際,(A) と (B) が同値な条件であることを以下のように直接示すことができます.

まず,(B) より, $$\left|\frac{z_2-z_1}{z_3-z_1}\right|=\left|\frac{z_2-z_3}{z_3-z_1}\right|=1$$ です.また, $$\frac{z_2-z_1}{z_3-z_1}=\frac{z_2-z_3+z_3-z_1}{z_3-z_1}=\frac{z_2-z_3}{z_3-z_1}+1$$ です.見やすくするために $\frac{z_2-z_1}{z_3-z_1}=\alpha$ とすると,上の $2$ つのことから $\left| \alpha \right|=\left| \alpha-1 \right|=1$ となります.この式から $$\alpha=\frac{1\pm\sqrt{3}i}{2}$$ と求めることができます.するとこの式は, $$\left(\frac{2(z_2-z_1)}{z_3-z_1}-1\right)^2=-3$$ と同値ですが,この式は前の節の証明の最後の方ででてきた式と同じものになっています.展開して整理すると, $$(z_1-z_2)^2+(z_2-z_3)^2+(z_3-z_1)^2=0$$ が導かれます.この議論を逆にたどると,(A) から (B) が導かれるので,(A) と (B) は同値になります.

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