問題文中の道とは,つまり,鉛筆を紙面に離さずに一筆で描ける曲線のことです.たとえば,紙面上に下図のような $4$ 本の線分からなる図形が書かれていた場合,
次のようにすれば, $4$ 本の線分すべてをちょうど $1$ 回ずつ横切る曲線が描けます.
この図形は例えば他にも下図のようにすることもできます.
また,下図のような図形は,四角形ですが,今回の問題では,$5$ 本の線分からなる図形として考えます.つまり,黒丸から黒丸までを一つの線分として考えてください.
上の図形の場合は次のようにすればよいですね.
さて,本題の図形はどうでしょうか.
考え方
この問題は,($1$),($2$) ともに通用する重要な特徴があります.それに気づけば一気に解決に近づくのですが,何かわかるでしょうか.偶数本の線分からなる図形と,奇数本の線分からなる図形のそれぞれについて,考察してみてください.
問題の本質
以下,この問題の本質について述べます.問題の図形は,下図の $2$ 種類の図形で成り立っています.
曲線がこれらの図形の線分を $1$ 回横切るとは,つまり,図形の外部から内部に入るか,あるいは内部から外部に出るということです.
したがって,偶数本の線分から成り立っている図形については,曲線の始点が図形の外部にあるならば,線分をちょうど $1$ 回ずつ横切ったあとは,曲線の終点も図形の外部にあります.同様に,内部に始点があるならば,最終的には内部に終点がくるはずです.
一方,奇数本の線分から成り立っている図形については,曲線の始点が図形の外部にあるならば,線分をちょうど $1$ 回ずつ横切ったあとは,曲線の終点は図形の内部にあります.同様に,内部に始点があるならば,最終的には外部に終点がくるはずです.
さて,問題の図では,$5$ 本の線分からなる図形がちょうど $2$ つあります.上の事実を踏まえると,曲線の始点と終点としてありうる配置場所はたった $1$ 種類しかありません.
($) の解答例
たとえば,下の図の曲線は条件を満たします.
他にも条件を満たすような曲線の描き方はたくさんありますが,上で述べたように,条件を満たすような曲線の始点と終点は必ず上の図のような位置にあります.つまり,曲線の端の片方は左下の大きめの領域に入っており,もう片方は右上の大きめの領域に入っていなければ,条件を満たすような曲線は描けません.
($) の証明
上の ($1$) で述べたことからわかるように,描いた曲線が線分をちょうど $1$ 回ずつ横切るならば,その両端は左下の領域と,右上の領域になければなりません.したがって,すべての線分をちょうど $1$ 回ずつ横切り,元の地点に戻る道は存在しません.
問題の本質を上手に捉えることが重要です.今回のように,本質はたいてい簡単な原理に基づいていることが多いです.