取り出した赤球が白球より常に多い確率|思考力を鍛える数学

問題文の補足説明をすると,$a+b$個の球が入った袋から,一つずつ球を取り出していくのですが,取り出す作業の最中はいつでも,取り出した赤い球の数の合計が白い球の数の合計より多くなければいけません.例を見てみましょう.

具体的な例

例えば,$a=3$,$b=2$とします.袋の中には合計$5$個の球が入っていることになります.赤い球を$A$,白い球を$B$で表し,取り出した順に左に並べるとすると,球のすべての取り出し方は以下の$10$通りあります. \begin{array}{c} \color{red}{AAABB} \\ \color{red}{AABAB} \\ ABAAB \\ BAAAB \\ AABBA \\ ABABA \\ BAABA \\ ABBAA \\ BABAA \\ BBAAA \end{array} 例えば一番下の文字列は,$1$番目と$2$番目に白い球を取り出し,$3,4,5$番目に赤い球を取り出した事象に対応しています.さて,この中で,問題文の条件を満たすのは文字色が赤くなっている上の二つの事象のみです.一つ注意していただきたいのは,取り出した赤い球と白い球の数が同数になってもいけないということです.

以上より,$a=3$,$b=2$の場合は求める確率は, $$\frac{2}{10}=\frac{1}{5}$$ ということになります.さて,一般の場合にはどのように考えればよいでしょうか.以下,ご覧になる前に是非ご自分で考えてみてください.

解法-余事象で考える-

取り出した赤い球が取り出した白い球より常に多い事象を$X$とします.求めるべきは事象$X$が起こる確率$P(X)$です.$X$の余事象は何でしょうか.数式にして考えてみるとわかりやすいと思います.$k$ 個 $(1 \le k \le a+b)$の球を取り出したとき,取り出した赤い球の個数が$A_k$個,取り出した白い球の個数が$B_k$個だったとします.$A_k+B_k=k$です.このとき, $$X=( 任意のkに対して,A_k > B_k となる事象)$$ ですから,$X$の余事象 $\bar{X}$ は, $$\bar{X}=( あるkがあって,A_k\le B_k となる事象)$$ です.ここで,$a > b$ (白球の総数は赤球の総数より少ない) なので, $$\bar{X}=(あるkがあって,A_k = B_k となる事象)$$ となります.つまり$\bar{X}$は,ある時点で取り出した赤い球と白い球の数が一致する事象ということになります.さらに,一番最初に取り出した球が白い球である事象を$Y$とします.$Y$の余事象を$\bar{Y}$とすると, $$P(\bar{X})=P(Y \cap \bar{X})+P(\bar{Y} \cap \bar{X})$$ ですが,一番最初に取り出した球が白い球ならば,$a > b$より,ある時点で必ず取り出した赤い球と白い球の数が一致するので, $$Y \cap \bar{X} =Y $$ です.また,一番最初に取り出した球が赤い球であって,ある時点で取り出した赤い球と白い球の数が一致するとき (つまり事象$\bar{Y} \cap \bar{X}$が起こるとき) ,その時点までの白い球と赤い球を入れ替えることによって,これは事象$Y \cap \bar{X}$と一対一に対応します.ゆえに $$P(\bar{Y} \cap \bar{X})=P(Y \cap \bar{X})=P(Y)$$ となります.ところで,$Y$の起こる確率は, $$P(Y)=\frac{b}{a+b}$$ なので,結局, \begin{eqnarray} P(X)&=&1-P(\bar{X})=1-\left\{ P(Y \cap \bar{X})+P(\bar{Y} \cap \bar{X}) \right\} \\ &=& 1-2P(Y) \\ &=& 1-\frac{2b}{a+b} =\frac{a-b}{a+b} \end{eqnarray} となるので,求める確率は $$\frac{a-b}{a+b}$$ です.

他にも帰納法や座標を用いる方法など,様々な解き方が知られています.ぜひ自分なりの解き方を探してみてください.

今回の問題は Bertrand’s ballot theorem と呼ばれるものと本質的に同じです.

Copied title and URL