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ウォリスの公式とは

ウォリスの公式: $$\large \prod_{n=1}^\infty \frac{2n}{(2n-1)}\frac{2n}{(2n+1)}=\frac{\pi}{2}$$

上の等式を,ウォリスの公式と言います.等式の左辺の $\Pi$ は,を意味する記号で,$\frac{2n}{(2n-1)}\frac{2n}{(2n+1)}$ という分数を $n=1$ から $\infty$ まですべて掛け合わせることを意味します.つまり,左辺を書き下すと, $$\prod_{n=1}^\infty \frac{2n}{(2n-1)}\frac{2n}{(2n+1)}=\frac{2}{1}\cdot\frac{2}{3}\cdot\frac{4}{3}\cdot\frac{4}{5}\cdot\frac{6}{5}\cdot\frac{6}{7}\cdots$$ という風に無限個の有理数がかけ合わさったものになります.

無限積になじみがなくて,気持ち悪い感じがする方は,いったん $$S_n=\prod_{k=1}^n \frac{2k}{(2k-1)}\frac{2k}{(2k+1)}$$ とおいて, $$\lim_{n \rightarrow \infty} S_n=\frac{\pi}{2}$$ がウォリスの公式であると考えても同じことです.

このような無限個の有理数の積を計算すると,円周率の $\pi$ がでてくるというなんとも不思議な等式なのです.

ウォリスの公式を証明してみましょう!

証明のための準備

ウォリスの公式を証明するために,ひとつ,補題を証明します.

補題: $$\large I_n=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^n x \ dx $$ とすると,次が成り立つ.
$$I_{2n}=\frac{2n-1}{2n}\cdot\frac{2n-3}{2n-2}\cdots \frac{1}{2}\cdot\frac{\pi}{2}$$ $$I_{2n+1}=\frac{2n}{2n+1}\cdot\frac{2n-2}{2n-1}\cdots \frac{2}{3}\cdot 1$$

補題の意味を説明しましょう.
$I_0=\frac{\pi}{2},I_1=1$ であることは計算すればすぐにわかります.$n \ge 2$ のときは,まともに積分を計算しようとすると大変です.ところが,この補題の式を使えば,積分の値を簡単に求めることができます.

たとえば,$I_4$ の値を求めたければ,上の式を使って, $$I_4=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^4 x \ dx=\frac{3}{4}\cdot\frac{1}{2}\cdot\frac{\pi}{2}=\frac{3\pi}{16}$$ となります.また,$I_7$ の値を求めたければ,下の式を使って, $$I_7=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^7 x \ dx=\frac{6}{7}\cdot\frac{4}{5}\cdot\frac{2}{3}\cdot1=\frac{16}{35}$$ となります.つまり,添字が偶数のときは上の式を,奇数のときは下の式を使えば,積分の値を簡単に求めることができます.

補題の証明には,部分積分を使います.

補題の証明: $n \ge 2$ とすると, $$I_n=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^n x \ dx=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} (\sin^{n-1} x)\sin x \ dx=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} (\sin^{n-1} x)(-\cos x)'\ dx$$ $$=\color{red}{\underset{0}{\underline{\color{black}{\left[(\sin^{n-1} x)(-\cos x)\right]_0^{\frac{\pi}{2}}}}}}+(n-1)\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^{n-2}\cos^2 x \ dx  (\leftarrow \text{部分積分を用いた})$$ $$=(n-1)\int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^{n-2}(1-\sin^2 x) \ dx=(n-1)I_{n-2}-(n-1)I_n$$ と計算できる.この式の最左辺と最右辺より, $$I_n=\frac{n-1}{n}I_{n-2}$$ となる.また,$I_0=\frac{\pi}{2},I_1=1$ なので,$n$ が偶数のときと,奇数のときに場合分けして,上の漸化式をくり返し用いれば, $$I_{2n}=\frac{2n-1}{2n}\cdot\frac{2n-3}{2n-2}\cdots \frac{1}{2}\cdot\frac{\pi}{2}$$ $$I_{2n+1}=\frac{2n}{2n+1}\cdot\frac{2n-2}{2n-1}\cdots \frac{2}{3}\cdot 1$$ を得る.

ウォリスの公式の証明

上の節で述べた補題を利用して,ウォリスの公式を実際に証明してみましょう.

ウォリスの公式の証明: $0 \le x \le \frac{\pi}{2}$ の範囲で,$0 \le \sin x \le 1$ であるから,特に自然数 $n$ に対して,$0 \le (\sin x)^{2n+1} \le (\sin x)^{2n} \le (\sin x)^{2n-1}$ が成り立つ.よって, $$0 \le I_{2n+1} \le I_{2n} \le I_{2n-1}$$ が成り立つ.(つまり,$I_n$ は単調非増加)
辺々, $I_{2n+1}$ で割ると, $$1 \le \frac{I_{2n}}{I_{2n+1}} \le \frac{I_{2n-1}}{I_{2n+1}}$$ となる.ここで,$I_n$ の漸化式 $I_{2n+1}=\frac{2n}{2n+1}I_{2n-1}$ を用いると, $$\frac{I_{2n-1}}{I_{2n+1}}=1+\frac{1}{2n}$$ を得る.したがって, $$1 \le \frac{I_{2n}}{I_{2n+1}} \le 1+\frac{1}{2n}$$ がすべての自然数 $n$ に対して成り立つ.この不等式において,$n \rightarrow \infty$ とすると,はさみうちの定理によって, $$\lim_{n\rightarrow \infty} \frac{I_{2n}}{I_{2n+1}}=1  \cdots (*)$$ となる.ところで, $$\frac{I_{2n}}{I_{2n+1}}=\frac{\pi}{2}\times\frac{2n-1\cdot 2n-3\cdots 3\cdot 1}{2n\cdot 2n-2\cdots 4\cdot 2}\times\frac{2n+1\cdot 2n-1\cdots 5\cdot 3}{2n\cdot 2n-2 \cdots 4\cdot 2}$$ であったから,$(*)$ は, $$\prod_{n=1}^\infty \frac{2n}{(2n-1)}\frac{2n}{(2n+1)}=\frac{\pi}{2}$$ と同値である.