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中線定理に関する話題を紹介します.中線定理の拡張,もし中線定理を忘れてしまった場合の公式の導き方などなど.




中線定理とは

中線定理とは,三角形の辺の長さに関する以下の定理のことです.エジプトの数学者パップスにちなんで,パップスの定理と呼ぶこともあります.

中線定理: $△ABC$ において,辺 $BC$ の中点を $M$ とすると,次の等式が成り立つ. $$AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)$$

線分 $AM$ を $△ABC$ の中線と呼びます.三角形の辺の長さと中線の長さ (の $2$ 乗) の関係式を表しています.この定理の証明は,座標平面を用いる方法,余弦定理を用いる方法,ベクトルを用いる方法など様々なやり方があります.

中線定理の拡張

中線定理の拡張版として,スチュワートの定理と呼ばれる定理があります.この定理は中線定理より少し複雑で,全く覚える必要はありませんが,中線定理と同様な方法で証明することができます.

スチュワートの定理: $△ABC$ において,辺 $BC$ 上に,$BD:CD=m:n$ となる点 $D$ をとると,次の等式が成り立つ. $$nAB^2+mAC^2=nBD^2+mCD^2+(m+n)AD^2$$

$m=n=1$ のとき,上の定理は中線定理になります.中線は点 $A$ と線分 $BC$ を $1:1$ に内分する点を結ぶ線分です.この $1:1$ という部分を $m:n$ に一般化したものがスチュワートの定理ということになります.以下に余弦定理を用いる証明を載せておきます.

証明: $\angle ADC=\theta$ とする.余弦定理より, \begin{array}{ll} AB^2&=AD^2+BD^2-2AD\cdot BD \cos (\pi-\theta) \\ &=AD^2+BD^2+2AD\cdot BD \cos \theta \\ AC^2&=AD^2+CD^2-2AD\cdot CD \cos \theta \end{array} また,$BD:CD=m:n$ より,$nBD=mCD$.よって, \begin{array}{ll} nAB^2+mAC^2&=n(AD^2+BD^2+2AD\cdot BD \cos \theta)+ \\ &m(AD^2+CD^2-2AD\cdot CD \cos \theta) \\ &=nBD^2+mCD^2+(m+n)AD^2 \end{array}

$3$ 点が同一直線上の場合の中線定理

さて,ここで,再び中線定理について考察してみましょう.中線定理は一見,三角形 $△ABC$ について述べた定理のようですが,実はこの定理は $3$ 点 $A,B,C$ が同一直線上にある場合でも成り立ちます.実際,以下の図のように,$A,B,C$ が同一直線上にあるとき,$B$ と $C$ の中点を $M$ とすると,
$$AB^2+AC^2=(2x+y)^2+y^2=2(2x^2+2xy+y^2)$$ $$2(AM^2+BM^2)=2((x+y)^2+x^2)=2(2x^2+2xy+y^2)$$ となるので, $$AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)$$ が成り立つことがわかります.また,$A,B,C$ が以下の図のように並んでいても同様に成立します.

つまり,中線定理において,$3$ 点はどのように配置していてもよいのです.この意味で,中線定理は三角形について述べた定理というよりはむしろ,与えられた $3$ 点が満たすべき普遍的な距離の性質に関する定理と捉えることができます.

中線定理を忘れてしまったとき

試験などで,中線定理の公式を忘れてしまった場合,どのようにして思い出せばよいでしょうか.このようなときは,二等辺三角形で考えるのがおすすめです.中線定理はどのような三角形に対しても成り立ちます.もちろん,二等辺三角形に対しても成り立ちます.そこで,次のような二等辺三角形を考えます.

三平方の定理から,中線 $AM$の長さは $\sqrt{x^2-y^2}$ であることがわかります.(三平方の定理は覚えていると信じたい!!) すると,$2(AM^2+BM^2)=2x^2$ となります.これは,$AB^2+AC^2$ に一致します.このことから,中線定理が $$AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)$$ という形をしていたことが思い出されます.


正弦定理,余弦定理などの重要な定理を覚えていくうちに,それらよりはどことなくマイナーな中線定理を忘れてしまうというのは結構ありがちです.忘れても思い出せる準備をしておきましょう.