$n$ 次方程式の解と係数の関係|思考力を鍛える数学

$2$ 次方程式の解と係数の関係を簡単におさらいしましょう.

$2$ 次方程式の解と係数の関係: $2$ 次方程式 $ax^2+bx+c=0 (a\neq 0)$ の $2$ 解を $\alpha,\beta$ とすると,次の $2$ 式が成り立つ.
$$\large \alpha+\beta=-\frac{b}{a}$$ $$\large \alpha \beta=\frac{c}{a}$$

たとえば,$2$ 次方程式 $x^2+2x-3=0$ の $2$ 解を $\alpha,\beta$ とすると, $$\alpha+\beta=-2,\alpha\beta=-3  (*)$$ が成り立ちます. 実際,$x^2+2x-3=(x-1)(x+3)$ なので,$x^2+2x-3=0$ の $2$ 解は $x=1,-3$ です.これらは確かに $(*)$ を満たします.

さて,$2$ 次方程式の解と係数の関係 が成り立つ理由を以下に述べます.

まず,$2$ 次方程式 $ax^2+bx+c=0 (a\neq 0)$ の $2$ 解を $\alpha,\beta$ とすると,当然 $$a\alpha^2+b\alpha+c=0,a\beta^2+b\beta+c=0$$ が成り立ちます.したがって,因数定理より,$2$ 次式 $ax^2+bx+c$ は $x-\alpha$ と $x-\beta$ を因数にもちます.$x^2$ の係数が $a$ で,さらに $x-\alpha$ と $x-\beta$ を因数にもつ $2$ 次式は $$a(x-\alpha)(x-\beta)$$ しかありません.よって, $$ax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)$$ となります.右辺を展開すると, $$a(x-\alpha)(x-\beta)=ax^2-a(\alpha+\beta)+\alpha\beta$$ となるので, $$ax^2+bx+c=ax^2-a(\alpha+\beta)+\alpha\beta$$ です.この両辺の係数を比較すれば,求めたい $2$ 式が得られます. $$\alpha+\beta=-\frac{b}{a}$$ $$\alpha \beta=\frac{c}{a}$$

$2$ 次式の場合の議論を一般化して,$n$ 次方程式の解と係数の関係を考えることができます.

まず,事実として,$n$ 次方程式の解は複素数の範囲で (重複を含めて) 必ず $n$ 個存在します.それら $n$ 個の解と,方程式の係数について次の関係が成り立ちます.証明は次節で与えます.

$n$ 次方程式の解と係数の関係: $n$ 次方程式 $a_n x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1 x+a_0=0 (a_n \neq 0)$ の $n$ 個の解を $\alpha_1,\alpha_2,\cdots,\alpha_n$ とすると,次の $n$ 本の関係式が成り立つ.
$$\alpha_1+\alpha_2+\cdots+\alpha_n=-\frac{a_{n-1}}{a_n}$$ $$\sum_{i < j} \alpha_i \alpha_j=\frac{a_{n-2}}{a_n}$$ $$\sum_{i < j < k} \alpha_i \alpha_j \alpha_k=-\frac{a_{n-3}}{a_n}$$ $$\vdots$$ $$\alpha_1\alpha_2\cdots \alpha_n=(-1)^n \frac{a_0}{a_n}$$ これら $n$ 本の関係式を $n$ 次方程式の解と係数の関係と呼びます.

たとえば,$n=3$ の場合は,解と係数の関係式は, $$\alpha_1+\alpha_2+\alpha_3=-\frac{a_2}{a_3}$$ $$\alpha_1\alpha_2+\alpha_2\alpha_3+\alpha_3\alpha_1=\frac{a_1}{a_3}$$ $$\alpha_1\alpha_2\alpha_3=-\frac{a_0}{a_3}$$ の $3$ つの式となります. 左辺の最初の式は,$n$ 個の解の和です. 左辺の $2$ 番目の式は $n$ 個の解から相異なる $2$ つを選んだものの積すべてについての和です. 一般に考えると,左辺の $k$ 番目の式は $n$ 個の解から相異なる $k$ 個を選んだものの積すべてについての和ということになります.

さて,右辺についてはどの式も分母はつねに $a_n$ です.また,$k$ 番目の分子は $a_{n-k}$ です.符号はマイナスから始まって交互に現れます.

例1 $3$ 次方程式 $x^3+4x^2+x-6=0$ の解を $\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3$ とすると,解と係数の関係より, $$\alpha_1+\alpha_2+\alpha_3=-4$$ $$\alpha_1\alpha_2+\alpha_2\alpha_3+\alpha_3\alpha_1=1$$ $$\alpha_1\alpha_2\alpha_3=6$$ が成り立つ.

実際,$x^3+4x^2+x-6=(x-1)(x+2)(x+3)$ より,解は $1,-2,-3$ なので,確かに上の $3$ つの等式を満たす.

例2 $4$ 次方程式 $x^4-3x^2+1=0$ の解を $\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3,\alpha_4$ とすると,解と係数の関係より, $$\alpha_1+\alpha_2+\alpha_3+\alpha_4=0$$ $$\alpha_1\alpha_2+\alpha_1\alpha_3+\alpha_1\alpha_4+\alpha_2\alpha_3+\alpha_2\alpha_4+\alpha_3\alpha_4=-3$$ $$\alpha_1\alpha_2\alpha_3+\alpha_1\alpha_2\alpha_4+\alpha_1\alpha_3\alpha_4+\alpha_2\alpha_3\alpha_4=0$$ $$\alpha_1\alpha_2\alpha_3\alpha_4=1$$ が成り立つ.

実は,$x^4-3x^2+1=(x^2-x-1)(x^2+x-1)$ なので,$x^4-3x^2+1=0$ の $4$ つの解は $$\frac{1+\sqrt{5}}{2},\frac{1-\sqrt{5}}{2},\frac{-1+\sqrt{5}}{2},\frac{-1-\sqrt{5}}{2}$$ である.

因数定理を使って,$n$ 次方程式を因数分解し,等式の両辺を比較することにより,得られます.

証明: $n$ 次方程式 $a_n x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1 x+a_0=0 (a_n \neq 0)$ の $n$ 個の解を $\alpha_1,\alpha_2,\cdots,\alpha_n$ とすると,因数定理より,$n$ 次式 $a_n x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1 x+a_0$ は $x-\alpha_1,x-\alpha_2,\cdots x-\alpha_n$ を因数にもちます.$x^n$ の係数が $a_n$ であって,$x-\alpha_1,x-\alpha_2,\cdots \alpha_n$ を因数にもつような $n$ 次式は $$a_n(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)\cdots(x-\alpha_n)$$ しかありません.よって,等式 $$a_n x^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1 x+a_0=a_n(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)\cdots(x-\alpha_n)$$ が成り立ちます.右辺を展開すると, $x^n$ の係数は $a_n$ $x^{n-1}$ の係数は $-a_n(\alpha_1+\cdots+\alpha_n)$ $x^{n-2}$ の係数は $a_n\left(\sum_{i < j} \alpha_i \alpha_j \right)$ $$\vdots$$ 定数項は $(-1)^n \alpha_1\cdots \alpha_n$

などとなります.これらを左辺と比較すれば,求めるべき等式が得られます.

練習問題を通して,一般の $n$ 次方程式の解と係数の関係の理解を深めましょう.

まずは基礎を確かめる $2$ 問です.

  $x^2-3x+1=0$ の $2$ 解を $\alpha,\beta$ とするとき,$\alpha^2+\beta^2$ の値はいくつか.

解と係数の関係より,$\alpha+\beta=3,\alpha\beta=1$ です. $$\alpha^2+\beta^2=(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta=3^2-2=7$$ よって,$\alpha^2+\beta^2=7$.

 $x^3-2x^2+3x-1=0$ の $3$ 解を $\alpha,\beta,\gamma$ とするとき,$\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha$ の値はいくつか.

解と係数の関係より,$\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=3$. ($x^3$ と $x$ の係数をみればよいです.)

次の $2$ 問は標準的な問題です.

 $2$ 次方程式 $x^2-2x-1=0$ の $2$ 解を $\alpha,\beta$ とするとき,$\left(\alpha+\frac{1}{\alpha}\right)^2,\left(\beta+\frac{1}{\beta}\right)^2$ の $2$ つを解にもつような $2$ 次方程式をひとつ求めよ.

解と係数の関係より,$\alpha+\beta=2,\alpha\beta=-1$ です.さてここで, $$A=\left(\alpha+\frac{1}{\alpha}\right)^2,B=\left(\beta+\frac{1}{\beta}\right)^2$$ とおくと,求めるべき $2$ 次方程式 (のひとつ) は,$(x-A)(x-B)=0$ です.$(x-A)(x-B)=x^2-(A+B)+AB$ なので,$A+B,AB$ を計算すればよいです.

$$A+B=\left(\alpha+\frac{1}{\alpha}\right)^2+\left(\beta+\frac{1}{\beta}\right)^2=\alpha^2+\beta^2+\frac{1}{\alpha^2}+\frac{1}{\beta^2}+4$$ $$=(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta+\frac{(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta}{\alpha^2\beta^2}+4=16$$ $$AB=\left(\alpha+\frac{1}{\alpha}\right)^2\left(\beta+\frac{1}{\beta}\right)^2=\left(\alpha\beta+\frac{\alpha}{\beta}+\frac{\beta}{\alpha}+\frac{1}{\alpha\beta}\right)^2$$ $$=\left(\alpha\beta+\frac{(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta}{\alpha\beta}+\frac{1}{\alpha\beta}\right)^2=64$$ よって,求めるべき $2$ 次方程式 (のひとつ) は, $$x^2-16+64=0$$ です.

 実数 $a,b,c$ が $a+b+c=4,a^2+b^2+c^2=14,a^3+b^3+c^3=34,a< b< c$ を満たすとき,$a+2b+3c$ の値を求めよ.

$a,b,c$ の値を求めることを考えます.ふつうに,$3$ つの条件式を連立して解こうとするのは大変です.なのでまず,$a,b,c$ の基本対称式 $a+b+c,ab+bc+ca,abc$ を求めます. 公式 $$a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)$$ に $a+b+c=4,a^2+b^2+c^2=14$ を代入すると. $$ab+bc+ca=1$$ が得られます.同様に,公式 $$a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)$$ に $a+b+c=4,a^2+b^2+c^2=14,ab+bc+ca=1$ を代入すると, $$abc=-6$$ が得られます.ここで,$3$ 次方程式 $(x-a)(x-b)(x-c)=0$ を考えます.左辺を展開すると,$(x-a)(x-b)(x-c)=x^3-(a+b+c)x^2+(ab+bc+ca)x-abc=x^3-4x^2+x+6$ となります.そこで, $$x^3-4x^2+x+6=0$$ の解を探して,組み立て除法を用いれば, $$x^3-4x^2+x+6=(x+1)(x-2)(x-3)=0$$ となり,$x=-1,2,3$ です.これが,$(x-a)(x-b)(x-c)=0$ の解なので,$a=-1,b=2,c=3$ です.($a < b < c $ に注意)

以上より, $$a+2b+3c=-1+4+9=12$$ が答えとなります.

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