複素数の相当と四則演算|思考力を鍛える数学

$x,y$ をそれぞれ実数として,$i$ を虚数単位 (つまり, $2$ 乗して $-1$ になる数) とするとき, $$x+yi$$ と表される数を複素数と呼びます.

注意

複素数には,大小関係が存在しません!実数の範囲内であれば,$2$ つの実数 $a$ と $b$ を比べて,どちらか大きいか考えることができましたが,ふたつの複素数をくらべて,どちらが大きいかを考えることはできません.

複素数 $z$ が $z=x+yi$ ($x,y$ は実数) と表せられているとき,$x$ を $z$ の実部 といい,$Re(z)$ で表します.
また,$y$ を $z$ の虚部といい,$Im(z)$ で表します.

ふたつの複素数 $z_1,z_2$ について,それぞれの実部同士と虚部同士が等しいとき,$z_1,z_2$ は等しいといい,$z_1=z_2$ と書きます.つまり, $$z_1=z_2 \Leftrightarrow Re(z_1)=Re(z_2) かつ Im(z_1)=Im(z_2)$$ です.これを複素数の相当条件といいます.

特に,複素数 $z$ が $0$ と等しくなるのは,実部と虚部がともに $0$ のときに限ります.

複素数の足し算と引き算は,実部同士,虚部同士についてそれぞれ行います.これは,虚数単位 $i$ を一つの文字だと思えば,多項式の加法・減法と全く同じです.

加法

$$・(3+2i)+(-2+4i)=(3-2)+(2+4)i=1+6i$$ $$・i+(1+i)+(2+i)+(3+i)=6+4i$$

減法

$$・(2-i)-(4-3i)=(2-4)+(-1+3)i=-2+2i$$ $$・1-(1-i)-(2-i)-(3-i)=(1-1-2-3)+(1+1+1)i=-5+3i$$

複素数の掛け算と割り算も,加法・減法と同様に,$i$ をひとつの文字だと思って,計算すればよいですが,ひとつ注意が必要で, $$i^2=-1$$ なので,$i^2$ という項が出てきた場合はそれを $-1$ で置き換えて簡単にします.

重要なことは,複素数は四則演算について閉じでいる (つまり,複素数の加減乗除の結果は再び複素数になる)ので,計算結果は必ず $x+yi$ ($x,y$ は実数) の形になるということです.

乗法

$$・(2+3i)(1+4i)=2+8i+3i+12i^2=(2-12)+(8+3)i=-10+11i$$ $$・\left(\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{3}}{2}i\right)^2=\frac{1}{4}+\frac{\sqrt{3}}{2}i+\frac{3}{4}i^2=\frac{1}{4}-\frac{3}{4}+\frac{\sqrt{3}}{2}i=-\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{3}}{2}i$$ $$・i^{99}=i^{98}i=(i^{2})^{49}i=(-1)^{49}i=-i$$

除法

割り算は,分母の共役複素数を,分母分子にかけて行います.つまり,分母が $x+yi$ ($x,y$ は実数) のときは,$x-yi$ を分母分子にかけます.これは,分母を実数にするためです.有理化のときと発想は似ています. $$・\frac{3+i}{1+2i}=\frac{(3+i)(1-2i)}{(1+2i)(1-2i)}=\frac{(3+2)+(-6+1)i}{1+4}=\frac{5-5i}{5}=1-i$$ $$・\frac{1+i}{1-i}=\frac{(1+i)(1+i)}{(1-i)(1+i)}=\frac{2i}{2}=i$$

以上,複素数の四則演算を紹介しました.まとめると, 複素数の計算のポイントはつぎの3つです. $1.$ $i$ を文字だと思って計算する. $2.$ $i^2=-1$ を適宜使って,式を簡単にする.

$3.$ 最終的な計算結果を $x+iy$ ($x,y$ は実数) の形にする.

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