ホーム >> 複素数 >> 共役複素数の基本的な性質

複素数に関する基本的な事項を解説します.




複素数と共役複素数

複素数 $z=a+ib$ ($a,b$ は実数,$i$ は虚数単位) に対して, $a-ib$ を $z$ の共役複素数といい,$\overline{z}$ と表記します.(これは,zバーと読むことが多いです.)
つまり,複素数 $z$ の共役をとるということは,虚部の $\pm$ の符号を変えるということです.複素数平面上では,この操作は,実軸に関する対称移動に対応しています.
共役複素数

共役操作と演算

複素数の共役をとる操作は,和,積,商などの演算と互いに可換 (交換可能) です.そのことを確かめてみましょう.

$z,w$ を複素数とするとき,次が成り立つ.
$$(1)\large  \overline{z+w}=\overline{z}+\overline{w}$$ $$(2)\large  \overline{zw}=\bar{z}\bar{w}$$ $$(3)\large  \overline{\left(\frac{z}{w}\right)}=\frac{\overline{z}}{\overline{w}}$$

証明: 実数 $a,b,c,d$ と虚数単位 $i$ を用いて, $$z=a+ib,\ w=c+id$$ とおく.
(1):  $z+w=(a+c)+i(b+d)$ なので,$\overline{z+w}=(a+c)-i(b+d).$ 一方,$\overline{z}=a-ib,\ \overline{w}=c-id$ より,$\overline{z}+\overline{w}=(a-ib)+(c-id)=(a+c)-i(b+d).$ よって,$\overline{z+w}=\overline{z}+\overline{w}$

(2): $zw=(ac-bd)+i(ad+bc)$ なので,$\overline{zw}=(ac-bd)-i(ad+bc)$ 一方,$\bar{z}\bar{w}=(a-ib)(c-id)=(ac-bd)-i(ad+bc)$ よって,$\overline{zw}=\bar{z}\bar{w}$

(3):  $$\frac{z}{w}=\frac{a+ib}{c+id}=\frac{(a+ib)(c-id)}{(c+id)(c-id)}=\frac{(ac+bd)+i(-ad+bc)}{c^2+d^2}$$ したがって, $$\overline{\left(\frac{z}{w}\right)}=\frac{(ac+bd)-i(-ad+bc)}{c^2+d^2}=\frac{(ac+bd)+i(ad-bc)}{c^2+d^2}$$ 一方, $$\frac{\overline{z}}{\overline{w}}=\frac{a-ib}{c-id}=\frac{(a-ib)(c+id)}{(c-id)(c+id)}=\frac{(ac+bd)+i(ad-bc)}{c^2+d^2}$$ よって,$\overline{\left(\frac{z}{w}\right)}=\frac{\overline{z}}{\overline{w}}$

共役複素数と絶対値

共役複素数と絶対値の関係を見てみましょう. 上と同様に,$z=a+ib,\ \overline{z}=a-ib$ とします.このとき,複素数の絶対値の定義から, $$|z|=\sqrt{a^2+b^2}$$ です.一方, $$|\overline{z}|=\sqrt{a^2+(-b)^2}=\sqrt{a^2+b^2}$$ なので,結局,$|z|=|\overline{z}|$ です.
また, $$z\overline{z}=(a+ib)(a-ib)=a^2+b^2=|z|^2$$ であることもわかります.

$z,\overline{z}$ について,次が成り立つ. $$(1)\large  |z|=|\overline{z}|$$ $$(2)\large  z\overline{z}=|z|^2$$

上の性質を用いると,$2$ つの複素数 $z,w$ についての次の公式が簡単に導かれます.ポイントは,複素数の絶対値は $2$ 乗して考えるということです.

$z,w$ を複素数とすると,次が成り立つ.
$$(1)  \large |zw|=|z||w|$$ $$(2)  \large \left|\frac{z}{w}\right|=\frac{|z|}{|w|}$$

証明: 
(1): $$|zw|^2=(zw)(\overline{zw})=zw\bar{z}\bar{w}=(z\bar{z})(w\bar{w})=|z|^2|w|^2$$ (2): $$|z|=\left|w\frac{z}{w}\right|$$ ここで,(1) より, $$\left|w\frac{z}{w}\right|=|w|\left|\frac{z}{w}\right|$$ となるから, $$|z|=|w|\left|\frac{z}{w}\right|$$ この両辺を $|w|$ で割ると, $$\left|\frac{z}{w}\right|=\frac{|z|}{|w|}$$ が得られる.

上のふたつの公式は,$z=a+ib,\ w=c+id$ などとおいて計算しても導けますが,計算がやや煩雑になって面倒です.共役複素数などの基本的な性質を知っていれば,上の証明のように,簡単に導くことができます.