$5$ で割り切れる多項式|思考力を鍛える数学

与えられた多項式を展開してしまえば解けるのですが,計算がかなり大変ですので,ここでは展開せずに解く方法を考えましょう.

与えられた多項式は対称式であり,展開したときの各項の次数がすべて $5$ となる斉次多項式です.これらの特徴をうまく利用してみましょう.

与えられた多項式を因数分解することを考えます.

与えられた多項式を $x$ についての多項式と考え,$x=-y$ を代入すると,式の値は $0$ になります.よって,因数定理より,$(x+y)$ を因数にもちます.同様にして,$(y+z),(z+x)$ も因数にもちます.よって, $$(x+y+z)^5-x^5-y^5-z^5=(x+y)(y+z)(z+x)\ f(x,y,z)$$ とかけます.ここで,$f(x,y,z)$ は多項式です.

左辺は対称式であり,さらに展開したときの各項の次数はすべて $5$ です.

また, $(x+y)(y+z)(z+x)$ も対称式で,展開したときの各項の次数はすべて $3$ なので,$f(x,y,z)$ は対称式で,各項の次数はすべて $2$ となります.したがって,定数 $a,b$ を用いて, $$f(x,y,z)=a(x^2+y^2+z^2)+b(xy+yz+zx)$$ とかけます.

つまり,恒等式 $$(x+y+z)^5-x^5-y^5-z^5=(x+y)(y+z)(z+x)\{ a(x^2+y^2+z^2)+b(xy+yz+zx)\}$$ が成り立ちます.

$(x,y,z)=(1,1,0)$ を代入すると,$2(2a+b)=30$ すなわち, $$2a+b=15$$ $(x,y,z)=(1,1,1)$ を代入すると,$8(3a+3b)=240$ すなわち, $$a+b=10$$ この連立方程式を解くと, $$a=b=5$$ となります.したがって, $$(x+y+z)^5-x^5-y^5-z^5=5(x+y)(y+z)(z+x)\{ (x^2+y^2+z^2)+(xy+yz+zx)\}$$ と因数分解できるので,元の式はつねに $5$ の倍数です.

合同式を用いると,より簡単に解くことができます.
まず, $(x+y)^5$ を考えると,二項定理より, $$(x+y)^5=\sum_{k=0}^5 {}_5 \mathrm{C} _k x^ky^{5-k}$$ $$=x^5+5x^4y+10x^3y^2+10x^2y^3+5xy^4+y^5 \equiv x^5+y^5  (mod 5)$$
よって,この結果を繰り返し用いると, $$(x+y+z)^5=\{x+(y+z)\}^5\equiv x^5+(y+z)^5 \equiv x^5+y^5+z^5  (mod 5)$$ したがって,$(x+y+z)^5-x^5-y^5-z^5$ は $5$ の倍数です.

より一般に,$p$ を素数とするとき, $$(x_1+x_2+\cdots+ x_n)^p \equiv x_1^p+x_2^p+\cdots+x_n^p  (mod p)$$ が成り立ちます.

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