完全数とその性質について|思考力を鍛える数学

完全数とは,約数の総和が自身の $2$ 倍となるような自然数のことです.たとえば,$6$ は完全数です. 実際,$6$ のすべての約数は $1,2,3,6$ で,その総和は $12$ となり,たしかに $6$ の $2$ 倍になります.また,$28$ も完全数です.実際,$28$ のすべての約数は $1,2,4,7,14,28$ で,その総和は $56$ となり,たしかに $28$ の $2$ 倍になります.完全数は,小さい方から $$6,28,496,8128,33550336, 8589869056, 137438691328, 2305843008139952128,$$ $$2658455991569831744654692615953842176, 191561942608236107294793378084303638130997321548169216, \ldots$$ とつづきます.(→参考1→参考2) この数列をみると,完全数は非常に珍しい数であることがわかります.実際,現在発見されている完全数はなんと $51$ 個しかないそうです.完全数は非常に古くから研究されているにも関わらず,いまだに謎の多い数です.『完全数は無限に存在するか』や『奇数の完全数は存在するか』などは有名な未解決問題です.

$2$ つの集合 $X, Y$ をつぎのように定義します. $$X=\{ N\mid N~\text{は偶数の完全数}\}$$ $$Y=\{2^{n-1}(2^n-1)\mid n~ \text{は自然数であり}, 2^n-1~ \text{は素数}\}$$ このとき,$X=Y$ であることが知られています.すなわち,すべての偶数の完全数の集合と,$2^n-1$ が素数であるような自然数 $n$ を用いて $2^{n-1}(2^n-1)$ と表される数全体の集合は一致します.この事実を証明してみましょう.

命題: $n$ を自然数とする.$2^n-1$ が素数ならば $2^{n-1}(2^n-1)$ は完全数である.

この命題は約数の総和を直接計算することにより示せます.この命題より,$X \supseteq Y$ であることがわかります.

証明: $N=2^{n-1}(2^n-1)$ とおく. 仮定より $2^n-1$ は素数であり,$2$ も素数であるから,$2^{n-1}(2^n-1)$は $N$ の素因数分解表示になっている.したがって,$N$ の約数の総和 $\sigma(N)$ は $$\sigma(N) = (1+2+\cdots +2^{n-1})(1+2^n-1)$$ ここで,等比数列の和の公式より, $$=(2^n-1)2^n$$ $$=2N$$ となるので,$N$ は完全数である.

命題: $N$ を偶数の完全数とする.このとき,$2^n-1$ が素数であるような自然数 $n$ を用いて,$N=2^{n-1}(2^n-1)$ と表すことができる.

$N$ を ($2$ のべき乗) $\times$ (奇数)の形に表し,約数の総和の乗法性などを用いることにより証明できます.この命題より,$X \subseteq Y$ であることがわかります.

証明: $N$ を偶数の完全数とする.$2$ 以上の自然数 $n$ を用いて,$N=2^{n-1}k$ ($k$ は奇数)とかける.$\sigma(a)$ で整数 $a$ の約数の総和を表すことにする.このとき, $$\sigma(N)=(1+2+\cdots+2^{n-1})\sigma(k)$$ $$=(2^n-1)\sigma(k)$$ となる.ここで,$N$ は完全数なので, $$=2N=2^nk$$ となる.つまり,$(2^n-1)\sigma(k)=2^nk$ である. $$\sigma(k)=k+\frac{k}{2^n-1}$$ $\sigma(k),k$ は整数なので,$\frac{k}{2^n-1}$ も整数.特に $\frac{k}{2^n-1}$ は $k$ の約数である. また,$n\ge 2$ なので,$k > \frac{k}{2^n-1}$ である. すなわち,$\sigma(k)$ は $2$ つの異なる $k$ の約数の和になっている.$\sigma(k)$ は定義より,$k$ のすべての約数の総和でだったので,$k$ の約数は $k, \frac{k}{2^n-1}$ のみということになり,$\frac{k}{2^n-1}=1$ を得る. 以上より,$N=2^{n-1}(2^n-1)$ と表される.

以上より,$X=Y$ であることが示されました.

 偶数の完全数は $1$ から連続する自然数の和で表すことができることを示せ.

$N$ を偶数の完全数とする.$2^n-1$ が素数であるような自然数 $n$ を用いて,$N=2^{n-1}(2^n-1)$ と表せる. このとき, $$\sum_{k=1}^{2^n-1} k = \frac{1}{2}(2^n-1)2^n = 2^{n-1}(2^n-1)= N$$ なので,$N$ は $1$ から $2^n-1$ までの自然数の和となる.

 $n$ を自然数とする.$2^{n}-1$ が素数ならば,$n$ は素数であることを示せ.

$n$ が素数でないとする.このとき,$1$ より大きい自然数 $a,b$ を用いて,$n=ab$ とかける.すると,二項定理より, $$2^n-1=2^{ab}-1=(2^{a})^b-1$$ $$=(2^a-1)\{(2^a)^{b-1}+(2^a)^{b-2}+\cdots+1\}$$ となる. $a,b>1$ なので,$2^a-1>1, (2^a)^{b-1}+(2^a)^{b-2}+\cdots+1 >1$ なので,$2^n-1$ は素数でない. よって対偶をとると,$2^{n}-1$ が素数ならば,$n$ は素数である.

 偶数の完全数の下一桁は $6$ または $8$ である.

$N$ を偶数の完全数とする.$2^n-1$ が素数であるような自然数 $n$ を用いて,$N=2^{n-1}(2^n-1)$ と表せる. 上の問より,$2^n-1$ が素数なので,$n$ も素数である. $n=2$ のとき,$N=6$ なので明らかに題意は成り立つ. 以後,$n$ は奇素数とする.$n-1$ は偶数なので,自然数 $k$ を用いて,$n-1=4k, 4k+2$ とかける. (i) $n-1=4k$ とかけるとき $$2^{n-1} = 2^{4k} =16^k \equiv 1^k \equiv 1~~ (\rm{mod}~5)$$ である.また, $$2^n-1 =2\times 2^{n-1}-1 \equiv 2-1=1 ~~ (\rm{mod}~5)$$ となる.したがって,$N \equiv 1 ~~ (\rm{mod}~5)$ を得る.これより,$N$ の下一桁は $1$ または $6$ となるが,$N$ は偶数なので,$N$ の下一桁は $6$ である. (ii) $n-1=4k+2$ とかけるとき $$2^{n-1} = 2^{4k+2} =4(16^k) \equiv 4~~ (\rm{mod}~5)$$ である.また, $$2^n-1 =2\times 2^{n-1}-1 \equiv 2\times 4-1\equiv 2 ~~ (\rm{mod}~5)$$ となる.したがって,$N \equiv 4\times 2 \equiv 3 ~~ (\rm{mod}~5)$ を得る.これより,$N$ の下一桁は $3$ または $8$ となるが,$N$ は偶数なので,$N$ の下一桁は $8$ である.

以上,(i),(ii) より,$N$ の下一桁は $6$ または $8$ である.

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