共線条件と共点条件|思考力を鍛える数学

異なる $3$ 点が同一直線上にあるための条件(共線条件)と,異なる $3$ 直線が $1$ 点で交わるための条件(共点条件)の基本的な考え方を紹介します.この記事では,すべて通常の平面上で考えます.

異なるいくつかの点 $p_1,…,p_n$ が同一直線上にあるとき,それらの点を通る直線を ($p_1,…,p_n$ の) 共線といいます.このとき,$p_1,…,p_n$ は共線をもつといいます.

当然のことながら,平面上の異なる $2$ 点はつねに共線をもちます.しかし,相異なる $3$ 点以上の点は共線をもつこともあれば,もたないこともあります.

共点条件

異なるいくつかの直線 $l_1,…,l_n$ が $1$ 点で交わるとき,その点を ($l_1,…,l_n$ の) 共点といいます.このとき,$l_1,…,l_n$ は共点をもつといいます.

平面上の異なる $2$ 直線はつねに共点 (交点) をもつとは限りません.$2$ 直線が平行のときは共点は持たず,そうでないときは共点を持ちます.$3$ 本以上の直線は,すべて平行ならば,共点を持ちませんが,すべては平行でないからといって共点を持つとは限りません.

平面上に $3$ 点が与えられたとき,それらが同一直線上にあるための条件を考えてみましょう.

例題 $3$ 点 $A (-1,2),B(2,3),C(3a+2,-a+5)$ が同じ直線上にあるとき,定数 $a$ の値を求めよ.

考え方 $

直線 $AB$ 上に点 $C$ があると考えます.

直線 $AB$ の方程式は, $$y=\frac{3-2}{2-(-1)}(x-(-1))+2$$ すなわち, $$y=\frac{1}{3}(x+1)+2$$ です.点 $C$ がこの直線上にあるので, $$-a+5=\frac{1}{3}(3a+2+1)+2$$ したがって,$\boxed{a=1}$ です.

考え方 $

直線 $AB$ と直線 $BC$ の傾きが同じであると考えます.

$a=0$ のときは $3$ 点は同一直線上にないことがすぐに確認できるので,$a\neq 0$ とします. 直線 $AB$ の傾きは, $$\frac{3-2}{2-(-1)}=\frac{1}{3}$$ です.一方,直線 $BC$ の傾きは $$\frac{3-(-a+5)}{2-(3a+2)}=\frac{a-2}{-3a}$$ したがって, $$\frac{1}{3}=\frac{a-2}{-3a}$$ これを解いて,$\boxed{a=1}$ と求まります.

上の考察をもとにして,一般的な状況を考えてみましょう. 平面上に相異なる $3$ 点 $A(a_1,a_2),B(b_1,b_2),C(c_1,c_2)$ が与えられているとします.この $3$ 点が同一直線上にあるための条件を,$3$ 点の座標で表すのが目標です. まず,$a_1\neq b_1,a_1\neq c_1$ のときを考えます.$A,B,C$ が同一直線上にあるための必要十分条件は,直線 $AB$ の傾きと直線 $AC$ の傾きが等しいということなので, $$\frac{a_2-b_2}{a_1-b_1}=\frac{a_2-c_2}{a_1-c_1}$$ が成り立ちます.これより, $$(a_2-b_2)(a_1-c_1)=(a_2-c_2)(a_1-b_1)$$ となり,整理すると, $$(a_1b_2-a_2b_1)+(b_1c_2-b_2c_1)+(c_1a_2-c_2a_1)=0 \cdots (*)$$ が得られます. また,$a_1=b_1$ のときは,$A,B,C$ が同一直線上にあるための条件は明らかに $a_1=b_1=c_1$ が成り立つことですが,($*$) に $a_1=b_1$ を代入すると, $$(b_2-a_2)(a_1-c_1)=0$$ となり,$A,B$ は相異なるので,$a_1=c_1$ が得られます.つまり,$a_1=b_1$ のときも 式 $(*)$ を満たすことが,$A,B,C$ が同一直線上にあるための必要十分条件です.

$a_1=c_1$ のときも同様です.結局,つぎの結果が得られます.

共線条件: $a_1,a_2,b_1,b_2,c_1,c_2$ を実数とする.
相異なる $3$ 点 $A(a_1,a_2),B(b_1,b_2),C(c_1,c_2)$ が同一直線上にあるための条件は $$\large (a_1b_2-a_2b_1)+(b_1c_2-b_2c_1)+(c_1a_2-c_2a_1)=0$$ が成り立つことである.

この結果はわざわざ覚えるほどの公式ではありません.

平面上に $3$ 直線が与えられたとき,それらが $1$ 点で交わるための条件を考えてみましょう.

例題 $3$ 直線 $4x+y-7=0,3x+2y-4=0,ax+y+5=0$ が $1$ 点で交わるとき,定数 $a$ の値を求めよ.

この問題は次のようにして解くことができます.まず, 連立方程式 \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 4x + y -7= 0 \\ 3x+2y -4= 0  \end{array} \right. \end{eqnarray} を解くと,$(x,y)=(2,-1)$ です.$3$ 番目の直線 $ax+y+5=0$ が $(2,-1)$ を通るので, $$2a-1+5=0$$ よって,$a=-2$ です.

上の考察をもとにして,一般的な状況を考えてみましょう.平面上にどの $2$ 直線も平行でないような $3$ 直線 $x_0x+y_0y+z_0=0,x_1x+y_1y+z_1=0,x_2x+y_2y+z_2=0$ が与えられているとします.ただし,$x_0,x_1,x_2,y_0,y_1,y_2,z_0,z_1,z_2$ はすべて実数です.連立方程式 \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x_0x + y_0y +z_0= 0 \\ x_1x+y_1y +z_1= 0  \end{array} \right. \end{eqnarray} を解くと,$(x,y)=(\frac{-y_1z_0+y_0z_1}{x_0y_1-x_1y_0},\frac{x_1z_0-x_0z_1}{x_0y_1-x_1y_0})$ です.$3$ 番目の直線 $x_2x+y_2y+z_2=0$ がこの点を通るので, $$x_2\left(\frac{-y_1z_0+y_0z_1}{x_0y_1-x_1y_0}\right)+y_2\left(\frac{x_1z_0-x_0z_1}{x_0y_1-x_1y_0}\right)+z_2=0$$ すなわち, $$x_2(-y_1z_0+y_0z_1)+y_2(x_1z_0-x_0z_1)+z_2(x_0y_1-x_1y_0)=0$$ が成り立ちます.よって,つぎの結果が得られます.

共点条件: $x_0,x_1,x_2,y_0,y_1,y_2,z_0,z_1,z_2$ を実数とする.
どの $2$ 直線も平行でない平面上の $3$ 直線 $x_0x+y_0y+z_0=0,x_1x+y_1y+z_1=0,x_2x+y_2y+z_2=0$ が $1$ 点で交わるための条件は, $$x_2(-y_1z_0+y_0z_1)+y_2(x_1z_0-x_0z_1)+z_2(x_0y_1-x_1y_0)=0$$ が成り立つことである.

この結果もわざわざ覚える必要はないでしょう.

一般的な状況についての共線条件,共点条件は一見複雑な等式のように見えますが,実は,行列式というものを使って,きれいに書くことができます.理由はここでは説明しませんが,先ほどの結果を行列式を用いて書くとつぎのようになります.

共線条件: $a_1,a_2,b_1,b_2,c_1,c_2$ を実数とする.
相異なる $3$ 点 $A(a_1,a_2),B(b_1,b_2),C(c_1,c_2)$ が同一直線上にあるための条件は $$\left| \begin{array}{ccc} 1 & a_1 & a_2 \\ 1 & b_1 & b_2 \\ 1 & c_1 & c_2 \end{array} \right|=0$$ が成り立つことである.

共点条件: $x_0,x_1,x_2,y_0,y_1,y_2,z_0,z_1,z_2$ を実数とする.
どの $2$ 直線も平行でない平面上の $3$ 直線 $x_0x+y_0y+z_0=0,x_1x+y_1y+z_1=0,x_2x+y_2y+z_2=0$ が $1$ 点で交わるための条件は, $$\left| \begin{array}{ccc} x_0 & x_1 & x_2 \\ y_0 & y_1 & y_2 \\ z_0 & z_1 & z_2 \end{array} \right|=0$$ が成り立つことである.

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