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『実係数多項式が根 $\alpha$ をもつとき,その共役複素数 $\bar{\alpha}$ も根となる』という性質について解説します.




実係数多項式の共役根

実係数多項式の共役根: 実係数多項式 $P(x)$ について,方程式 $P(x)=0$ の複素数解のひとつが $\alpha$ であるとき, その共役複素数 $\bar{\alpha}$ も $P(x)=0$ の解である.すなわち,次が成り立つ. $$\large P(\alpha)=0 ⇒ P(\bar{\alpha})=0$$

実係数多項式 $P(x)$ について,方程式 $P(x)=0$ の解のひとつを見つけると,もう一つ解がわかるというお得な定理です.ただし,$\alpha$ が実数の場合は,$\overline{\alpha}=\alpha$ なので,上の定理が成り立つのは明らかです.重要なのは,虚数解 $\alpha$ を見つけた場合です.

実係数多項式,共役複素数とは

定理の中にでてくる用語についておさらいします.

実係数多項式

実係数多項式とは実数を係数にもつ多項式のことです.言い換えれば,虚数を係数に持たない多項式という意味です.たとえば,$x^2+\frac{3}{2}x-1, x^4-\pi x, x^{5}+\sqrt{3}x$ などはすべて実係数多項式です.一方,$x^2-ix, x^3-\omega x$ などは虚数を係数にもつので,実係数多項式ではありません.

冒頭の定理は,実係数多項式について述べている定理で,虚数を係数にもつ多項式については成り立たないので,注意してください.実際,方程式 $x^2-ix=0$ は,$x=0,i$ を解にもちますが,$i$ の共役複素数である $-i$ は解にもちません.

共役複素数

複素数 $z=a+ib$ ($a,b$ は実数) の共役複素数とは $\bar{z}=a-ib$ のことです.すなわち,元の複素数の虚部の正負を入れ替えたものです.共役複素数については下の記事で詳しく述べています.冒頭の定理の証明で用いている事実はすべて下の記事に書いてあるので,共役複素数についてよく知らない方は,下の記事から読んでみてください.
→共役複素数の基本的な性質

証明

証明は,共役と演算の可換性を用いることにより示せます.

証明: $P(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0$ を実係数 $n$ 次多項式とする.($a_0,a_1,\cdots,a_n$ は全て実数で,$a_n \neq 0$)
$P(x)=0$ の複素数解のひとつを $\alpha$ とする.このとき,$P(\alpha)=0$ である.両辺の共役をとると,$\overline{P(\alpha)}=\bar{0}=0.$ 一方, $$\overline{P(\alpha)}=\overline{a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_1x+a_0} $$ $$ =\overline{a_nx^n}+\overline{a_{n-1}x^{n-1}}+\cdots+\overline{a_1x}+\overline{a_0} (∵共役と和は交換可能)$$ $$=\overline{a_n}\overline{x^n}+\overline{a_{n-1}}\overline{x^{n-1}}+\cdots+\overline{a_1}\overline{x}+\overline{a_0} (∵共役と積は交換可能)$$ $$=a_n\overline{x^n}+a_{n-1}\overline{x^{n-1}}+\cdots+a_1\overline{x}+a_0 (∵実数の共役をとっても不変)$$ $$=a_n\overline{x}^n+a_{n-1}\overline{x}^{n-1}+\cdots+a_1\overline{x}+a_0 (∵共役と積は交換可能)$$ $$=P(\overline{\alpha})$$ したがって,$P(\overline{\alpha})=0$ となる.

補足と応用

$2$ 次方程式について

$2$ 次方程式 $ax^2+bx+c=0 (a \neq 0)$ について,解の公式より, $$x=\frac{-b\pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}$$ となりますが,$b^2-4ac < 0$ の場合には,$2$ 解はいずれも虚数解になります.そして解の公式を見ればこの $2$ つは互いに共役です (つまり,一方が他方の共役複素数).したがって,$2$ 次方程式の場合には,解の公式より,冒頭の定理が成り立つことが確認できます.

高次方程式の解について

冒頭の定理を用いると,高次方程式の解の種類について大雑把に分類することができます.たとえば,$3$ 次方程式が虚数解 $\alpha$ を持つとわかっている場合,残りの $2$ 解について,ひとつは $\overline{\alpha}$,もうひとつは実数ということがわかります.このように,解の組み合わせをある程度絞ることができます.