ここでいう平均とは,相加平均のことを指します.たとえば,$n=3$ のとき,$(-1,2,5)$ という $3$ つの実数の組を考えると, $$-1\le \frac{2+5}{2}=3.5$$ $$2 \le \frac{-1+5}{2}=2$$ $$5 \not\le \frac{-1+2}{2}=0.5$$ となって,最後の式が違反するので,この組は条件を満たしません.さて,どのような組が条件を満たすでしょうか.まずは具体的な値で実験して,条件を満たす組をひとつ見つけることをオススメします.
ヒント
まず,どのような実数の組が条件を満たすのかを予想することが重要です.予想が立ったら,それを示すためにはどうすればいいかを考えます.難しい議論は必要ないですが,何に着目すればいいのかを見極める着眼点が大切です.
解説
$n$ 個の実数 $a_1,…,a_n$ が条件を満たすのは $a_1=a_2=\cdots =a_n$ のときに限ることを示します. $a_1,…a_n$ のうち,最大のものを $a_k$ とします.このとき,条件から, $$a_k \le \frac{1}{n-1}\sum_{i \neq k} a_i$$ すなわち, $$(n-1)a_k\le \sum_{i \neq k} a_i$$ が成り立ちます.この式をつぎのように変形することに気づけるかどうかがポイントです. $$\underbrace{(a_k-a_1)}_{\ge 0}+\cdots +\underbrace{(a_k-a_{k-1})}_{\ge 0}+\underbrace{(a_k-a_{k+1})}_{\ge 0}+\cdots +\underbrace{(a_k-a_{n})}_{\ge 0}\le 0$$ 各かっこの中はすべて $0$ 以上です.左辺の和が $0$ 以下なので, $$a_k=a_1,\ a_k=a_2,\ …,\ a_k=a_n$$ すなわち, $$a_1=a_2=\cdots =a_n$$ が成り立ちます.
逆に,$a_1=a_2=\cdots =a_n$ のときは条件を満たします.以上より, $(a_1,…,a_n)=(t,…,t)$ (ただし $t$ は任意の実数) が答えとなります.
別解
$a_1=a_2=\cdots =a_n$ のときに限るという予想のもと,背理法で示すこともできます.ポイントは平均に着目することです.
$a_1,…,a_n$ の中で,$n$ 個すべての平均より大きいものがあったと仮定します.(これは問題の条件とは関係ありません)
そのひとつを $a_k$ とします.つまり, $$a_k >\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n a_i$$ です.これを式変形すると, $$(n-1)a_k > \sum_{i \neq k} a_i$$ を得ます.これは問題の条件に矛盾します.したがって,$a_1,…,a_n$ の中で,$n$ 個すべての平均より大きいものはありません.これは $a_1=a_2=\cdots =a_n$ であることを示しています.(詳細は簡単なので読者に任せます.)
あとは,先に述べた解と同じです.