等差数列について|思考力を鍛える数学

最も基本的な数列である等差数列について解説します.

$$1,3,5,7,9,11,13,15,\cdots$$ は初項 $1$ に一定の数 $2$ を次々に足していった数列です.

一般に,数列 $\{a_n\}$ において,各項に一定の数 $d$ を加えると次の項が得られるとき,この数列を等差数列といいます.

このとき,一定の数 $d$ を数列 $\{a_n\}$ の公差といいます.

等差数列 $\{a_n\}$ ではすべての自然数 $n$ について, $$a_{n+1}-a_{n}=d$$ が成り立ちます.これは,数列が等差数列であることの数式による表現になっています.隣合う $2$ つの項の差は常に $d$ で一定という意味です.

等差数列の例

・ある数の倍数を小さい順に並べた数列は等差数列になります.

$Example$ $4$ の倍数の全体からなる数列 $$4,8,12,16,20,24,28,\cdots$$ は初項 $4$ ,公差 $4$ の等差数列

・等差数列から一定間隔ごとに取り出した数を並べた数列は再び等差数列になります.

$Example$ 初項 $2$,公差 $3$ の等差数列 $$\color{red}{2},5,\color{red}{8},11,\color{red}{14},17,\color{red}{20},23,\color{red}{26},29,\cdots$$ から,ひとつおきに数を取り出して作った数列 $$2,8,14,20,26,32,38,44,50,\cdots$$ は,初項 $2$,公差 $6$ の等差数列になります.

・ふたつの等差数列に現れる共通の数を取り出して並べた数列は再び等差数列になります.

$Example$ 初項 $3$,公差 $2$ の等差数列 $$3,5,\color{red}{7},9,11,\color{red}{13},15,17,\color{red}{19},\cdots$$ と,初項 $1$,公差 $3$ の等差数列 $$1,4,\color{red}{7},10,\color{red}{13},16,\color{red}{19},\cdots$$ に現れる共通の数を並べた数列 $$7,13,19,\cdots$$ は初項 $7$,公差 $6$ の等差数列となります.

等差数列は一般項が $n$ の式で表せる数少ない数列のうちのひとつです.
初項が $a$,公差が $d$ である数列 $\{a_n\}$ の各項は順に, $$a_1=a, a_2=a+d, a_3=a+2d, a_4=a+3d, a_5=a+4d,\cdots$$ となります.一般に次のことが成り立ちます.

等差数列の一般項: 初項 $a$,公差 $d$ の等差数列 $\{a_n\}$ の一般項は $$\large a_n=a+(n-1)d$$ で表せる.

$a$,$d$ は定数で,$n$ は変数です.したがって,等差数列の一般項は $n$ の $1$ 次式となります.逆に,一般項が $n$ の $1$ 次式となる数列は等差数列です.実際,ある数列 $\{b_n\}$ の一般項が,ある定数 $k,s$ を用いて,$b_n=kn+s$ と書けたとすると, $$b_n=k+s+(n-1)k$$ なので,数列 $\{b_n\}$ は初項 $k+s$,公差 $k$ の等差数列です.

初項 $a$ ,公差 $d$,項数 $n$ の等差数列 の和 $S_n$ を考えてみましょう.この等差数列を書き並べると, $$a,a+d,a+2d,\cdots,a+(n-2)d,a+(n-1)d$$ となります.これら $n$ 個の数をすべて足したものが $S_n$ です.いま,この数列を逆順に並べてみます. $$a+(n-1)d,a+(n-2)d,a+(n-3)d,\cdots,a+d,a$$ これらをすべて足したものも当然 $S_n$ です.ここで,これらふたつの数列を縦に足します. \begin{array}{ccccccc} &a&a+d&a+2d&\cdots&a+(n-2)d&a+(n-1)d \\ +&a+(n-1)d&a+(n-2)d&a+(n-3)d&\cdots&a+d&a \\ \hline &2a+(n-1)d&2a+(n-1)d&2a+(n-1)d&\cdots&2a+(n-1)d&2a+(n-1)d \\ \end{array} すると,すべての項が $2a+(n-1)d$ となります.これら $n$ 個の $2a+(n-1)d$ の和は $2S_n$ なので, $$2S_n =n \{2a+(n-1)d \}$$ という等式が成り立ちます.したがって次のことがわかります.

等差数列の和の公式 I: 初項 $a$,公差 $d$ ,項数 $n$ の等差数列の和を $S_n$ とすると, $$\large S_n=na+\frac{1}{2}dn(n-1)$$ が成り立つ.

この公式の文字列をそのまま暗記しようとするのはあまり賢い方法ではありません.それよりも,この公式を導いた方法,つまり,もとの数列とその数列を逆順に並べたものを縦に足しあげるという方法を覚えておく方がいいでしょう.なぜなら,この方法さえ覚えておけば公式はいつでもすぐに作り出せるからです. 公差ではなく,末項が与えられた場合の等差数列の和はもっと簡単に求めることができます.

上の数列について,末項を $l$ とすると,$l=a+(n-1)d$ です.つまり,$(n-1)d=l-a$ なので,これを上の等差数列の和の公式に代入すると, $$S_n=na+\frac{1}{2}n(l-a)=\frac{1}{2}n(a+l)$$ したがって,次のことがわかります.

等差数列の和の公式 II: 初項 $a$,末項 $l$,項数 $n$ の等差数列の和を $S_n$ とすると, $$\large S_n=\frac{1}{2}n(a+l)$$ が成り立つ.

すなわち,等差数列の初項と末項と項数さえわかれば,公差がわからなくとも,その和を求めることができるのです.

$Example$ ・初項 $1$,公差 $3$,項数 $30$ の等差数列の和は $$30+\frac{1}{2}\times3\times30\times 29=1335$$ ・初項 $10$,公差 $-2$,項数 $20$ の等差数列の和は $$200+\frac{1}{2}\times(-2)\times 20\times 19=-180$$ ・初項 $-3$,末項 $42$,項数 $10$ の等差数列の和は $$\frac{1}{2}\times10\times(42-3)=195$$

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