オイラー予想の反例|思考力を鍛える数学

オイラー予想とは,スイスの偉大な数学者レオンハルト・オイラーが提唱した,フェルマーの最終定理を発展させた数学の予想です.フェルマーの最終定理とはよく知られているように,

フェルマーの最終定理: $3$以上の自然数$n$に対して, $$x^n+y^n=z^n$$ を満たす$0$でない自然数解$(x,y,z)$は存在しない.

というものですが,オイラーはこれを次のように拡張させた予想を立てました.

オイラー予想: $n > 3$のとき,$n-1$個の$n$乗数の和は$1$つの$n$乗数で表すことはできない.

オイラーの発表以降,この予想は長い間信じられてきましたが,$1966$年に$n=5$の場合における反例が見つかりました.それが今回の問題で問われている等式です.

考え方

さて,問題文を注意深く読んでください.問題は,『以下の等式を満たす自然数$n$を求めよ.』ではなく,『以下の等式を満たす自然数$n$の存在が知られている.$n$を決定せよ.』となっています.この違いがわかるでしょうか.実は後者の聞き方の方が幾分易しい聞き方になっています.なぜなら,等式を満たす自然数解の存在を示さなくてよいからです.方程式が与えられただけであれば解が存在するかどうかはわかりませんが,解の存在が知られているのであれば解の候補を一つに絞りさえすればそれが自動的に解となるのです.したがって,与えられた等式から出発してなんらかの方法で$n$の範囲を狭めていき,最終的に解の候補を$1$つに絞るのが基本的な方針となります.

不等式で狭める

不等式で$n$の範囲を狭めてみましょう.与えられた等式より, $$133^5 < n^5 < 4 \times 133^5$$ となりますが,安直に最右辺を$5$乗数で上からおさえることを考えれば,上の等式から $$133^5 < n^5

さて,今度は剰余の考え方で$n$の範囲を狭めてみましょう.すなわち,$n$をある数で割った余りに関する情報を集めます.まず,左辺は偶数なので$n^5$は偶数,つまり$n$は偶数です.さらに簡単な計算によって,左辺が$3$の倍数であることがわかるので,$n$も$3$の倍数です.したがって$n$は$6$の倍数です.また,左辺は$7$で割って$2$余るので,$n^5$も$7$で割って$2$余る数です.ここで,$2$以上の自然数$M$に対して$M^5-M$は常に$10$の倍数なので,$M^5$の下一桁と$M$の下一桁は常に等しいです.このことから与えられた等式をみると$n$の下一桁は$4$であることがわかります.

$133 < n < 199.5$の範囲で,下一桁が$4$であるような$6$の倍数は$144,174$しかありません.このうち,$5$乗した数を$7$で割った余りが$2$となるのは$144$のみです.よって求めるべき答えは$144$です.上にも述べたように,$144$が実際に解になっていることは確かめる必要はありません.

様々なアプローチをしなければ解けない問題です.

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