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二つの無理数によって,自然数全体は二つに分割されるという,とても不思議できれいな定理を紹介します.



⇨予備知識


レイリーの定理とは

レイリーの定理とは,二つの無理数が自然数全体を二つに分割するという一風変わった定理です.

レイリーの定理:$\frac{1}{r}+\frac{1}{s}= 1$ を満たす無理数 $r,s$ に対して,$B_r = \{ \lfloor nr \rfloor \mid n \in \mathbb{N} \}, B_s = \{ \lfloor ns \rfloor \mid n \in \mathbb{N} \}$ とする.このとき,任意の自然数は $B_r$ または $B_s$ のどちらか一方のみに属す.


定理の説明

無理数 $r$ に対して,$s = \frac{1}{1-\frac{1}{r}}$ とおくと,$s$ は必ず無理数になります.したがって,『$\frac{1}{r}+\frac{1}{s}= 1$ を満たす無理数 $r,s$ に対して,』という部分は,『無理数 $r$ に対して,$s = \frac{1}{1-\frac{1}{r}}$ とおくと,』と読み替えても同じことです.

$\lfloor \cdot \rfloor$ はガウス記号または床関数と呼ばれるもので, $\lfloor x\rfloor$ は $x$ を超えない最大の自然数を表します.たとえば,$\lfloor \sqrt{2}\rfloor = 1, \lfloor \pi \rfloor =3, \lfloor 1.2\rfloor=1$ などとなります.この記号については →ガウス記号の基礎的なこと で詳しく解説しています.

さて,ふたつの無理数 $r,s$ によって,ふたつの集合 $B_r, B_s$ が定義されます.すると,実はこれらふたつの集合が,自然数全体をふたつに分割しているというのがレイリーの定理の主張になります.

具体例

具体例を通して,この定理の雰囲気を掴みましょう.
たとえば,$r = \sqrt{2}$ とします.このとき,$s = \frac{1}{1-\frac{1}{\sqrt{2}}}=\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{2}-1}=2+\sqrt{2} $ となります.これより,集合 $B_\sqrt{2}, B_{2+\sqrt{2}}$ を計算すると次のようになります. $$B_\sqrt{2} = \{ \lfloor n\sqrt{2} \rfloor \mid n \in \mathbb{N} \}= \{\lfloor \sqrt{2}\rfloor,\lfloor 2\sqrt{2}\rfloor,\lfloor 3\sqrt{2}\rfloor,\lfloor 4\sqrt{2}\rfloor,\lfloor 5\sqrt{2}\rfloor,...\}$$ $$=\{1,2,4,5,7,8,9,11,12,14,15,16,18,19,21,22,24,...\}$$ $$B_{2+\sqrt{2}} = \{ \lfloor n(2+\sqrt{2}) \rfloor \mid n \in \mathbb{N} \}=\{\lfloor 2+\sqrt{2} \rfloor, \lfloor 2(2+\sqrt{2}) \rfloor, \lfloor 3(2+\sqrt{2}) \rfloor,\lfloor 4(2+\sqrt{2}) \rfloor, \lfloor 5(2+\sqrt{2}) \rfloor,...\}$$ $$=\{3,6,10,13,17,20,23,27,30,34,37,40,44,47,51,...\}$$ すると,実際,すべての自然数 $1,2,3,4,...$ は集合 $B_\sqrt{2}$ または $B_{2+\sqrt{2}}$ のどちらか一方にちょうど一度属していそうだということがわかります.

右記サイト →Beatty Sequence にいろいろな無理数 $r$ について,$B_r, B_{\frac{1}{1-\frac{1}{r}}}$ を計算した結果が載っているので眺めてみると面白いでしょう.

レイリーの定理の証明

レイリーの定理を証明してみましょう. レイリーの定理を証明するためには次の二つのことを示す必要があります.
$(i)$ $B_r, B_s$ の両方に属すような自然数は存在しない.
$(ii)$ $B_r,B_s$ のどちらにも属さない自然数は存在しない.

つまり,$(i)$ によって,二つの集合のどちらにも属すような,(重なるような) 自然数が存在しないことを示し.$(ii)$ によって,どの自然数も二つの集合のどちらか一方には属すことを示します.

どちらの証明も背理法によって (驚くほど簡単に) 示すことができます.証明のポイントとなるのは,ガウス記号の言い換え,条件 $\frac{1}{r}+\frac{1}{s}= 1$,そして隣り合う自然数の間には自然数が存在しないという当たり前の事実です.

$(i)$ の証明:$B_r, B_s$ の両方に属すような自然数は存在しないことを背理法で示す.ある自然数 $a$ が $B_r, B_s$ の両方に属すと仮定する.このとき,$B_r, B_s$ の定義から,ある自然数 $m,n$ を用いて,$a = \lfloor mr \rfloor = \lfloor ns \rfloor$ とかける.したがって, $$a \le mr < a+1 $$ $$a \le ns < a+1 $$ が成り立つ.ところが,$r,s$ は無理数で,$m,n$ は自然数なので,$mr,ms$ は無理数である.一方 $a$ は自然数なので, $a \neq mr, ns$ である.したがって, $$a < mr < a+1 ~~~\cdots ①$$ $$a < ns < a+1~~~\cdots ②$$ が成り立つ. 式 ① を $r$ で割り,式 ② を $s$ で割ると, $$\frac{a}{r} < m < \frac{a}{r}+\frac{1}{r}$$ $$\frac{a}{s} < n < \frac{a}{s}+\frac{1}{s}$$ を得る.これらの式を辺々足し合わせると, $$a\left( \frac{1}{r}+\frac{1}{s} \right) < m+n < a\left( \frac{1}{r}+\frac{1}{s} \right) +\left( \frac{1}{r}+\frac{1}{s} \right) $$ を得る.仮定より $\frac{1}{r}+\frac{1}{s}= 1$ なので, $$a < m+n < a+1$$ が成り立つ.ところが $a, m+n$ はともに自然数であるからこれは不合理である.
よって,$B_r, B_s$ の両方に属すような自然数は存在しない.

$(ii)$ の証明:$B_r,B_s$ のどちらにも属さない自然数は存在しないことを背理法で示す.
ある自然数 $a$ が $B_r, B_s$ のどちらにも属さないと仮定する.$mr < a$ を満たす最大の自然数 $m$ を考える.このとき,$a le (m+1)r$ であるが,$a \not\in B_r$ であるから, $a+1 \le (m+1)r$ でなければならない.さらに,$a+1$ は自然数で,$(m+1)r$ は無理数であるから,$a+1 < (m+1)r$ である.同様に,$ns < a$ を満たす最大の自然数をとると,$a+1 < (n+1)s$ が成り立つ.以上の議論をまとめると,ある自然数 $m,n$ があって,次の $4$ 式を満たす. $$mr < a ~~\cdots ①$$ $$a+1 < (m+1)r ~~\cdots ②$$ $$ns < a ~~\cdots ③$$ $$a+1 < (n+1)s ~~\cdots ④$$ 式 ① と ③ より, $$m+n < \frac{a}{r} + \frac{a}{s} = a ~~\cdots ⑤$$ が成り立つ.
一方,式 ② と ④ より, $$(m+1) + (n+1) > \frac{a+1}{r}+\frac{a+1}{s} = a+1$$ すなわち, $$m+n +1 > a ~~ \cdots ⑥$$ が成り立つ.式 ⑤ と ⑥ を合わせると,$m+n < a < m+n+1$ が成り立つ.ところが $a, m+n$ はともに自然数であるからこれは不合理である.
よって,$B_r,B_s$ のどちらにも属さない自然数は存在しない.