ヘロンの公式|思考力を鍛える数学

三角形の $3$ 辺の長さから,その面積を求める公式を紹介します.

ヘロンの公式とは,三角形の $3$ 辺の長さを用いて面積を計算する公式です.具体的には次の式で表されます.

ヘロンの公式: $△ABC$ の三辺の長さを $a,b,c$ とする. $$\large s=\frac{a+b+c}{2}$$ とおくと,$△ABC$ の面積 $S$ は, $$\large S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$$ となる.

・どのような三角形についてもこの公式が成り立ちます. ・たとえば,三辺の長さが $3,6,7$ である三角形の面積は, $$\sqrt{8\cdot(8-3)\cdot(8-6)\cdot(8-7)}=\sqrt{8\cdot5\cdot2\cdot1}=4\sqrt{5}$$ となります.

・$s$ を 使わずに書くと公式は, $$S=\frac{\sqrt{(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)}}{4}$$ となりますが,$s=\frac{a+b+c}{2}$ とおいた方が式がすっきりして,対称性もわかりやすいです.

ヘロンの公式を証明しましょう.三角関数を使って証明するのが比較的簡単です.

証明: $△ABC$ の面積を $S$ とすると, $$S=\frac{1}{2}bc \sin A=\frac{1}{2}bc \sqrt{1-\cos ^2 A}=\frac{1}{2}bc\sqrt{(1+\cos A)(1-\cos A)} ・・・(*)$$ です.ここで,余弦定理より, $$\cos A=\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}$$ です.これを $(*)$ に代入して,あとはひたすら計算します.
$$S=\frac{1}{2}bc\sqrt{\left(1+\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}\right)\left(1-\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}\right)}$$ $$=\frac{1}{2}bc\sqrt{\frac{\{(b+c)^2-a^2\}\{a^2-(b-c)^2\}}{4b^2c^2}}$$ $$=\sqrt{\frac{(-a+b+c)(a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)}{16}}$$ $$=\sqrt{\frac{2s-2a}{2}・\frac{2s}{2}・\frac{2s-2b}{2}・\frac{2s-2c}{2}}$$ $$=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$$

実は,内接円と傍接円に着目すれば,純粋に幾何学的に証明することができます.

ヘロンの公式は必ずしも覚えていなければならない公式ではありません.なぜなら,三角形の三辺の長さが与えられた時,三角形の面積はヘロンの公式を用いなくても三角比を使えば求められるからです.実際,上の証明中にみたように,三辺の長さが $a,b,c$ の三角形の面積 $S$ は $$S=\frac{1}{2}bc \sin A=\frac{1}{2}\sqrt{1-\cos^2 A}$$ ですが,余弦定理から, $$\cos A=\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}$$ と計算できるので,三辺の長さの値から,ヘロンの公式を用いずに,$S$ を求めることができます. したがって,余弦定理というより重要な公式を知っていれば,ヘロンの公式を知らなくても特に困ることはありません.

ただ,ヘロンの公式を用いた方がわりとすばやく面積が求められるので,検算などで使うとよいと思います.

 三辺の長さが $3,4,5$ である三角形の面積を求めよ.

 三辺の長さが $5,5,8$ である三角形の面積を求めよ.

 三辺の長さが $5,7,9$ である三角形の面積を求めよ.

$$\frac{21}{4}\sqrt{11}$$

→$3$ 辺の長さが素数,面積が整数の三角形

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