巡回式の不等式|思考力を鍛える数学

数学オリンピックでは頻出の不等式の証明問題です.特に,問題のように巡回式の形になっているものはよく見かけます.
ここで,$3$変数有理式 $f(a,b,c)$ が巡回式とは, $$f(a,b,c)=f(b,c,a)=f(c,a,b)$$ が成り立つことを言います.さて,不等式の問題を解くときには,式変形をしながらよく知られた不等式を用いて評価するという方法が一般的です.変数はすべて正の実数なので,相加相乗平均の不等式,コーシー・シュワルツの不等式などが使えます.ここでは,$xyz=1$という束縛条件が与えられているので,それをいかに用いるかがポイントとなります.

コーシー・シュワルツの不等式

コーシー・シュワルツの不等式を用いると, $$\left( \frac{x^2}{y+z}+\frac{y^2}{z+x}+\frac{z^2}{x+y} \right)\bigl((y+z)+(z+x)+(x+y)\bigr) \ge (x+y+z)^2$$ となります.したがって, $$\left( \frac{x^2}{y+z}+\frac{y^2}{z+x}+\frac{z^2}{x+y} \right) \ge \frac{1}{2}(x+y+z)$$ です.この式と$xyz=1$という条件をみれば,相加相乗平均の不等式を用いればうまくいくことが予想できます.

相加相乗平均の不等式

相加相乗平均の不等式を用いると, $$\frac{1}{2}(x+y+z) \ge \frac{3}{2}\sqrt[3]{xyz}=\frac{3}{2}$$ となります.この式の等号成立条件は $x=y=z$ です.また,与えられた条件 $xyz=1$ より,等号成立条件は $x=y=z=1$ です.このとき,コーシー・シュワルツを用いたときの等号も成立します.よって, $$\frac{x^2}{y+z}+\frac{y^2}{z+x}+\frac{z^2}{x+y} \ge \frac{3}{2}$$ が成り立ち,等号成立は $x=y=z=1$ のときです.

不等式を複数回用いたときの等号成立条件は,すべての等号成立条件の共通部分を考えることに注意しましょう.

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