九点円の定理とは,三角形と円に関する非常に美しい定理です.受験等に役立つことはほとんどないと思いますが,この定理の美しさを鑑賞する価値は十分あります.ぜひ,秩序だった様を存分に味わってください.
九点円の定理: $△ABC$ について,以下の $9$ つの点は同一円周上にある. ・各辺の中点 $M_A,M_B,M_C$ ・各頂点から対辺におろした垂線の足 $H_A,H_B,H_C$ ・各頂点と垂心の中点 $E_A,E_B,E_C$
つまり,どんな三角形をとってきても,その三角形から定まる $9$ つの点は常に同一円周上にあるというのが九点円の定理の主張です.この円のことを九点円と呼びます. $M_A,M_B,M_C$ は三角形の各辺を二等分する点です.
各頂点から,対辺におろした $3$ つの垂線は $1$ 点で交わり,その点を垂心と呼ぶのでした.ここでは,垂心を $H$ で表します.したがって,$E_A,E_B,E_C$ はそれぞれ線分 $AH,BH,CH$ を二等分する点です.
まず,$4$ 点 $M_B,M_C,E_B,E_C$ がある円 $\Gamma$ 上にあることを中点連結定理を用いて示します.
つぎに,$H_B,H_C$ も円 $\Gamma$ 上にあることを円周角の定理などを用いて示します.
これにより,$6$ 点 $M_B,M_C,E_B,E_C,H_B,H_C$ が $\Gamma$ 上にあることがわかります. 同様の議論で,$6$ 点 $M_A,M_B,E_A,E_B,H_A,H_B$ もある円 $\Gamma’$ 上にあることがわかります.
ここで,相異なる $3$ 点を通る円は存在すればただひとつなので,$M_B,E_B,H_B$ を通る円はただひとつです.したがって,$\Gamma=\Gamma’$ となるので,$9$ 点 $M_A,M_B,M_C,E_A,E_B,E_C,H_A,H_B,H_C$ が同一円周上にあることがわかります.
証明: はじめに,$4$ 点 $M_B,M_C,E_B,E_C$ が同一円周上にあることを示す. $△ABC$ と中点 $M_B,M_C$ について,中点連結定理より, $$M_BM_C // BC,\ \ M_BM_C=\frac{1}{2}BC$$ が成り立つ. 同様に,$△ HBC$ と中点 $E_B,E_C$ について,中点連結定理より, $$E_BE_C // BC,\ \ E_BE_C=\frac{1}{2}BC$$ が成り立つ.
これらより,線分 $M_BM_C$ と線分 $E_BE_C$ は平行で長さが等しい.したがって,四角形 $M_CE_BE_CM_B$ は長方形となり,$4$ 点 $M_B,M_C,E_B,E_C$ は同一円周上にある.(この円を $\Gamma$ とする)
つぎに.$H_B,H_C$ も円 $\Gamma$ 上にあることを示す. $\underline{H_B \in \Gamma}$
$M_CE_BE_CM_B$ は長方形なので,$\angle E_BM_CM_B=90°$ である. 一方,$H_B$ は頂点 $B$ から $AC$ に下ろした垂線の足であったから,$\angle E_BH_BM_B=90°$ である.したがって,四角形 $M_CE_BH_BM_B$ に注目すると,$\angle E_BM_CM_B+\angle E_BH_BM_B=90°+90°=180°$ である.したがって,$4$ 点 $M_C,E_B,H_B,M_B$ は同一円周上にある.ところで,$M_C,E_B,M_B$ は円 $\Gamma$ 上の点だったので,$H_B$ も円 $\Gamma$ 上にある. $\underline{H_C \in \Gamma}$
$M_CE_BE_CM_B$ は長方形なので,$\angle M_CM_BE_C=90°$ である. 一方,$H_C$ は頂点 $C$ から $AB$ に下ろした垂線の足であったから,$\angle E_CH_CM_C=90°$ である.したがって,四角形 $H_CM_CE_CM_B$ に注目すると,円周角の定理の逆より,$4$ 点 $H_C,M_C,E_C,M_B$ は同一円周上にある.ところで,$M_C,E_C,M_B$ は円 $\Gamma$ 上の点だったので,$H_C$ も円 $\Gamma$ 上にある.
以上より,$6$ 点 $M_B,M_C,E_B,E_C,H_B,H_C$ は同一円周上にある.全く同様の議論によって, $6$ 点 $M_A,M_B,E_A,E_B,H_A,H_B$ も同一円周上にある.ところでこの $6$ 点のうち,$M_B,E_B,H_B$ は円 $\Gamma$ 上にあったので,残りの $3$ 点も円 $\Gamma$ 上になければならない.よって,$9$ 点 $M_A,M_B,M_C,E_A,E_B,E_C,H_A,H_B,H_C$ は同一円周上にある.
$△ABC$ の九点円は,$△M_AM_BM_C$ の外接円です.一方,$△M_AM_BM_C$ と $△ABC$ は相似で,その相似比は $1:2$ であることから,$△ABC$ の九点円の半径が,外接円の半径の半分であることが従います.
九点円の中心は外心と垂心の中点
$O$ は $△ABC$ の外心,$N$ は $9$ 点円の中心です.
九点円は内接円と傍接円に接する(フォイエルバッハの定理)
反転を使うとかなりきれいに証明できます.
下記のサイトで,実際にマウスで三角形を動かして,九点円の挙動をみることができます.
→九点円のサイト