巡回三元連立方程式|思考力を鍛える数学

連立方程式の問題です.問題文を方程式で表すことは難しくありません.いかにしてこの見慣れない連立方程式に取り組むかが今回の課題です.連立方程式が巡回していることがひとつの鍵となります.

ヒント・考え方

まず,与えられた条件を方程式で表してみると,次のような連立方程式を得ます. \begin{eqnarray}  \begin{cases} x_1+x_2x_3=-2 \\ x_2+x_3x_1=-2 \\ x_3+x_1x_2=-2 \end{cases} \end{eqnarray} 結局,この連立方程式を解けばよいのですが,あまり見慣れない形をしています.ふつうの連立1次方程式を解くように,加減法や消去法で取り組もうとすると,式が複雑になることが予想されます.そこで,連立方程式が巡回していること (つまり,最初の式を $x_1 \rightarrow x_2 \rightarrow x_3$ と置き換えると $2$ 番目の式になり,さらに同様の変換をすると $3$ 番目の式になる) に着目して,もっと賢い方法はないだろうかと考えてみてください.

解答例

$k=x_1x_2x_3$ とおきます.まず,簡単な観察から,$x_1,x_2,x_3 \neq 0$ であることがわかります.実際,たとえば,$x_1=0$ とすると,$2,3$ 番目の方程式から $x_2=x_3=-2$ となりますが,これは $1$ 番目の方程式に矛盾します.他の場合も同様です. したがって,連立方程式は $$x_i+\frac{k}{x_i}=-2  (i=1,2,3)$$ とまとめて表すことができます.これより, $$x_i^2+2x_i+k=0  (i=1,2,3)  \cdots (*)$$ となり,この $2$ 次方程式を解くと,$x_i=-1\pm \sqrt{1-k}$ を得ます.$x_i$ は実数であるという条件から,$k \le 1$ となります. (i) $k=1$ のとき このときは,$x_1=x_2=x_3=-1$ となりますが,これは不適です. (ii) $k< 1$ のとき  (ii-a) すべての解が同じとき  このときは,式 $(*)$ より,  $$x_i^3+x_i^2-2x_i=0$$  すなわち,  $$(x_i-1)(x_i+2)=0$$  となり,$x_i=1,-2$ を得ますが,いずれの場合も不適です.  (ii-b) ひとつの解が $-1+\sqrt{1-k}$,残り二つの解が $-1-\sqrt{1-k}$ のとき  このときは,$k$ の定め方より,  $$k=(-1+\sqrt{1-k})(-1-\sqrt{1-k})^2$$  となり,  $$k=k(-1-\sqrt{1-k})$$  すなわち,$\sqrt{1-k}=-2$ となりますが,これを満たす $k$ は存在しないので不適です.  (ii-c) ひとつの解が $-1-\sqrt{1-k}$,残り二つの解が $-1+\sqrt{1-k}$ のとき  このときは,$k$ の定め方より,  $$k=(-1-\sqrt{1-k})(-1+\sqrt{1-k})^2$$  となり,  $$k=k(-1+\sqrt{1-k})$$  すなわち,$\sqrt{1-k}=2$ となり,これを解くと $k=-3$ を得ます.このとき,ひとつの解は $-3$,残りふたつの解は $1$ です.

以上より,$(x_1,x_2,x_3)=(1,1,-3),(1,-3,1),(-3,1,1)$ が答えとなります.

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