和の法則と積の法則|思考力を鍛える数学

数え上げの基本的な二つの原理である 和の法則と積の法則を紹介します.

ある程度複雑な数え上げの問題を解く場合,ほとんど必ずと言ってもいいほど場合分けを行います.場合分けをするときは,考察している状況に重複がないように,そして全ての場合を尽くしているようにしなければなりません.この方法は,下の和の法則に基づいています.

和の法則: ある事柄 $A$ と $B$ は同時には起こらないとする.
$A$ の起こり方が $m$ 通り,$B$ の起こり方が $n$ 通りあるとき,$A$ または $B$ のどちらかが起こる場合は $m+n$ 通りある.

簡単な例をふたつみてみましょう.

 ふたつのさいころ $A,B$ を投げるとき,出た目の和が $10$ 以上となる場合は何通りあるか.

$A$ の目が $a$ で $B$ の目が $b$ である状況を $(a,b)$ で表すことにします.出た目の和が $10$ 以上となる場合は,出た目の和が $10$ か $11$ か $12$ のいずれかです.また,これらは同時には起こりません. したがって,それぞれの場合について場合の数を調べて最後に足し合わせればよいです.

出た目の和が $ のとき

この場合は,$(4,6),(5,5),(6,4)$ の $3$ つの場合があります.

出た目の和が $ のとき

この場合は,$(5,6),(6,5)$ の $2$ つの場合があります.

出た目の和が $ のとき

この場合は,$(6,6)$ だけです.

以上より,$3+2+1=6$ 通りです.

 $20$ 以下の自然数で,$3$ の倍数または偶数である数はいくつあるか.

$20$ 以下の $3$ の倍数は $6$ 個あり,$20$ 以下の偶数は $10$ 個あるので,求める個数は $6+10=16$ 個としてはいけません.なぜなら,$3$ の倍数であることと偶数であることが同時に起こる場合があるからです.したがって,上記の数え方では重複して同じ数を数えていることになります.正しくは以下のように重なりがないように場合分けしなければなりません.

$20$ 以下の偶数は $10$ 個あります.また,$20$ 以下の $3$ の倍数であって,偶数でないものは,$3,9,15$ の $3$ つあります.よって,求めるべき場合の数は $10+3=13$ 通りです.

積の法則: ある事柄 $A$ の起こり方が $m$ 通り,そのそれぞれの場合について,事柄 $B$ の起こり方が $n$ 通りあるとする.このとき,$A,B$ がともに起こる場合は $mn$ 通りある.

簡単な例をふたつみてみましょう.

 ふたつのさいころ $A,B$ を投げるとき,$A$ の目が偶数で,$B$ の目は $4$ 以上である場合は何通りあるか.

$A$ の目が偶数である場合は $2,4,6$ の $3$ 通りあります.$B$ の目が $4$ 以上である場合は $4,5,6$ の $3$ 通りあります.したがって,求めるべき場合の数は $3\times 3=9$ 通りです.

 $24$ の正の約数の個数はいくつあるか.

$24$ を素因数分解すると,$24=2^3\times 3$ となります.$24$ の正の約数は $0 \le a\le 3,0\le b \le 1$ である整数 $a,b$ を用いて, $$2^a3^b$$ とかけます.$a$ の選び方は $4$ 通りあり,そのそれぞれの場合について,$b$ の選び方は $2$ 通りあるので,$4\times 2=8$ 個です.

 $2400$ の正の約数の総和を求めよ.

$2400$ を素因数分解すると,$2400=2^5\times 3\times 5^2$ となる.ここで, $$(1+2+2^2+2^3+2^4+2^5)(1+3)(1+5+5^2)$$ を展開すると,$2400$ の正の約数がちょうどひとつずつ現れる.したがってこの値を求めれば良い. $$(1+2+2^2+2^3+2^4+2^5)(1+3)(1+5+5^2)=\frac{2^6-1}{2-1}\times 4 \times \frac{5^3-1}{5-1}$$ $$=63\times 4\times 31=7812$$

 $1000$ 以上 $3000$ 未満の偶数で,各桁の数字がすべて異なっているものはいくつあるか.

千の位の数は $1$ または $2$ である.これは同時には起こらない. $(i)$ 千の位が $1$ のとき 偶数なので,一の位は $0,2,4,6,8$ の $5$ 通りある.そのそれぞれの場合について,十の位の選び方は $8$ 通り,さらにそのそれぞれの場合について,百の位の選び方は $7$ 通りあるので, $$5\times 8\times 7=280$$ $(ii)$ 千の位が $2$ のとき

各桁の数字はすべて異なっていなければならないので,一の位は $0,4,6,8$ の $4$ 通りある.そのそれぞれの場合について,十の位の選び方は $8$ 通り,さらにそのそれぞれの場合について,百の位の選び方は $7$ 通りあるので, $$4\times 8\times 7=224$$ 以上 $(i),(ii)$ より,$280+224=504$ 通り.

 $100$ 円,$50$ 円,$10$ 円の硬貨が十分多くある.この $3$ 種類の硬貨を使って,$230$ 円を支払う場合の数を求めよ.ただし,使わない硬貨があってもよい.

$100$ 円硬貨を使用する枚数は $0,1,2$ 枚のいずれか. $(i)$ $100$ 円硬貨を $0$ 枚使うとき $50$ 円硬貨を使用する枚数は $0,1,2,3,4$ 枚のいずれか.また,そのそれぞれの場合について,支払い方が $1$ 通りある. $(ii)$ $100$ 円硬貨を $1$ 枚使うとき $50$ 円硬貨を使用する枚数は $0,1,2$ 枚のいずれか.また,そのそれぞれの場合について,支払い方が $1$ 通りある. $(iii)$ $100$ 円硬貨を $2$ 枚使うとき $50$ 円硬貨を使用する枚数は $0$ 枚で支払い方は $1$ 通りある.

以上より,$5+3+1=9$ 通り.

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