階乗を含む有理数の計算|思考力を鍛える数学

左辺は$9$個の有理数の和になっています.$n!$は $$n!=n\times(n-1)\times \cdots \times 2\times 1$$ を意味する記号です.したがって,左辺は普通に計算できるので頑張れば不等式が成り立つことはわかりそうですが,計算が大変です.うまく工夫すればもっと簡単に解くことができそうですが,何か他の方法を思いつくでしょうか.

他の問題とのアナロジー

唐突ですがみなさんは以下のような問題を見たことがあるのではないでしょうか.

次の式を簡単にせよ. $$\frac{1}{1 \cdot 2}+\frac{1}{2 \cdot 3}+\frac{1}{3 \cdot 4}+\cdots +\frac{1}{n(n+1)}$$

上の問題は $$\frac{1}{k(k+1)}=\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}$$ という式変形を用いれば,+と−がうまいこと相殺して,結局 $1-\frac{1}{n+1}$ となります.さて,この式変形のアイデアを用いるとはじめの問題も簡単に解くことができます.若干問題の状況は異なりますがアイデアは同じです.

解答

$$\frac{k}{(k+1)!}=\frac{1}{k!}-\frac{1}{(k+1)!}$$ が成り立つので, $$(左辺)=\left( 1-\frac{1}{2!}\right)+\left( \frac{1}{2!}-\frac{1}{3!}\right)+\cdots+\left( \frac{1}{9!}-\frac{1}{10!} \right)=1-\frac{1}{10!}$$ よって左辺は$1$より小さいことがわかります.

2002年のJMO予選第7問の類題です.

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