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相加相乗平均の不等式の拡張である,重みつき相加相乗平均の不等式とその証明を紹介します.



⇨予備知識


重みつき相加相乗平均の不等式とは

重みつき相加相乗平均の不等式とは,相加相乗平均の不等式を一般化したつぎの不等式のことです.

重みつき相加相乗平均の不等式: $\alpha_1,...,\alpha_n$ を $\displaystyle \sum_{i=1}^n \alpha_i =1$ を満たす $n$ 個の正の実数とし,$x_1,...,x_n$ を $n$ 個の正の実数とするとき,次の不等式が成り立つ. $$\sum_{i=1}^n \alpha_i x_i \ge \prod _{i=1}^n x_i^{\alpha_i}$$ また,等号成立条件は,$x_1=x_2=\cdots =x_n$ のときである.

等式の左辺は $\alpha_ix_i$ の総和を意味しており,書き下して表すと,$\displaystyle \sum_{i=1}^n \alpha_ix_i=\alpha_1x_1+\alpha_2x_2+\cdots +\alpha_nx_n$ となります.
等式の右辺は $x_i^{\alpha_i}$ の総積を意味しており,書き下して表すと,$\displaystyle \prod_{i=1}^n x_i^{\alpha_i}=x_1^{\alpha_1}\times x_2^{\alpha_2}\times \cdots \times x_n^{\alpha_n}$ となります.

具体例

・$n=1$ のときは,$x_1\ge x_1$ という自明に成り立つ不等式になります.
・$n=2$ のときは, $$\alpha_1x_1+\alpha_2x_2\ge x_1^{\alpha_1}x_2^{\alpha_2}$$ という不等式になります.たとえば,$\alpha_1=\frac{1}{4},\alpha_2=\frac{3}{4}$ のとき,重みつき相加相乗平均の不等式は $$\frac{x_1+3x_2}{4}\ge x_1^{\frac{1}{4}}x_2^{\frac{3}{4}}$$ となりますが,この式は相加相乗平均の不等式を用いれば, $$\text{(左辺)}=\frac{x_1+x_2+x_2+x_2}{4}\ge (x_1x_2x_2x_2)^{\frac{1}{4}}=\text{(右辺)}$$ のようにして示すことができます.より一般に,重みがすべて有理数の場合は,相加相乗平均の不等式を用いて,重みつき相加相乗平均の不等式を示すことができます.(後の節で示します)

・重みに負の数が含まれる場合は一般には成り立ちません.実際,$n=2,\alpha_1=-1,\alpha_2=2$ のとき,不等式は $$-x_1+2x_2\ge \frac{x_2^2}{x_1}$$ となりますが,これが不成立となるような $(x_1,x_2)$ はいくらでも存在します.(たとえば,$(x_1,x_2)=(2,1)$)

特徴

・重みがすべて $\frac{1}{n}$ のときは,相加相乗平均の不等式となります.
・$n=2$ で,$\alpha_1=\frac{1}{p},\alpha_2=\frac{1}{q}$ とかけるときは,Youngの不等式 になります.

重みつき相加相乗平均の不等式の証明(その1)

重みつき相加相乗平均の不等式の証明はいろいろありますが,この記事では,$2$ 通りの証明を紹介します.まずは,Jensenの不等式を用いた代表的な方法です.

証明: $f(x)=-\log x$ とおくと,$f''(x)=\frac{1}{x^2} >0$ なので,$f(x)$ は狭義凸関数である.したがって, $$\large -\log\left(\sum_{i=1}^n \alpha_ix_i \right)\le -\sum_{i=1}^n \alpha_i \log x_i  \text(\rm{Jensen}\ の不等式より)$$ $$\large =-\sum_{i=1}^n \log x_i^{\alpha_i}  \text{(対数関数の性質より)}$$ $$\large =-\log \prod_{i=1}^n x_{i}^{\alpha_i}  \text{(対数関数の性質より)}$$ $f(x)$ は単調減少関数なので, $$\large \sum_{i=1}^n \alpha_i x_i \ge \prod_{i=1}^n x_i^{\alpha_i}$$ が成り立つ.

重みつき相加相乗平均の不等式の証明(その2)

Jensenの不等式をすでに理解している方は上の証明で満足していただけると思いますが,Jensenの不等式はやや高級な定理なので,これを用いない証明も紹介しておきます.こちらは相加相乗平均の不等式を利用するだけなので,その意味では上の証明より初等的ですが,厳密には高校数学の範囲外の知識を用いています.

証明: まず,重みがすべて有理数の場合に主張が成り立つことを示す.$\alpha_1,...,\alpha_n$ がすべて有理数のとき,正整数 $q$ と $\sum_{i=1}^n p_i=q$ を満たす $n$ 個の正整数 $p_1,...,p_n$ を用いて, $$\alpha_1=\frac{p_1}{q},\alpha_2=\frac{p_2}{q},...,\alpha_n=\frac{p_n}{q}$$ と書ける$^{*}$.したがって,相加相乗平均の不等式より, $$\frac{1}{q} \sum_{i=1}^n p_ix_i \ge \prod_{i=1}^n x_i^{\frac{p_i}{q}}$$ が成り立つ.よって, $$\large \sum_{i=1}^n \alpha_i x_i \ge \prod_{i=1}^n x_i^{\alpha_i}  \cdots (1)$$ となる.

つぎに,重みが実数の場合を示す.$\alpha_1,...,\alpha_n$ が実数のとき,各 $i (1\le i \le n)$ に対して,正の有理数列 $\{{q_m}^{(i)}\}_{m\ge 1}$ であって,任意の $m$ に対して,$\displaystyle \sum_{i=1}^n q_m^{(i)}=1$ かつ $\lim_{m \rightarrow \infty} {q_m}^{(i)}=\alpha_i$ となるものが存在する$^{**}$.上で証明したことから,重みがすべて有理数の場合には式 (1) が成り立っているから, $$ \sum_{i=1}^n {q_m}^{(i)} x_i \ge \prod_{i=1}^n x_i^{{q_m}^{(i)}}$$ 両辺で $m\rightarrow \infty$ とすれば, $$ \sum_{i=1}^n \alpha_i x_i \ge \prod_{i=1}^n x_i^{\alpha_i}$$ を得る.

$(*):$ これは,$n$ 個の有理数が与えられたら,それらを通分して表すことができるということです. たとえば,$\frac{1}{2},\frac{4}{3},\frac{4}{5}$ という $3$ つの有理数が与えられたら, $$\frac{15}{30},\frac{40}{30},\frac{24}{30}$$ というように,すべての分母を同じ数にして表現することが可能である,ということを述べているだけです.
$(**):$ これはきちんと証明するには高校数学外の知識が必要です.ここでは詳細な証明は述べませんが, 大学初年度で学ぶ以下の事実を用いれば帰納法で示せます.

事実 任意の実数 $\alpha$ に対して,有理数列 $\{q_n\}_{n\ge 1}$ であって,$\lim_{n\rightarrow \infty} q_n=\alpha$ となるものが存在する.