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調和級数とは

$$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}$$ で定義された級数を調和級数といいます.これは,自然数の逆数和を無限に足し合わせていく級数です.調和級数は,より小さな数を足し合わせていくにもかかわらず,正の無限大に発散します.

調和級数が発散することは,高校数学で習う次の命題のが成り立たないことの反例にもなっています.

級数と数列の関係: $\{a_n\}$ を実数列とするとき,次が成り立つ. $$\sum_{n=1}^\infty a_n \text{が収束する} \Rightarrow \lim_{n \rightarrow \infty} a_n=0$$

調和級数が発散することの証明

証明は非常に簡単な不等式による評価をするだけです.

証明: $S_N=1+\frac{1}{2}+\cdots+\frac{1}{N}$ とする.
$$\lim_{N \rightarrow \infty} S_N =\infty$$ を示す.

$$S_2 =1+\frac{1}{2} \ge 1+\frac{1}{2}$$ $$S_4 =1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4} \ge 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{4}=1+\frac{2}{2}$$ $$S_8=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8} \ge 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}=1+\frac{3}{2}$$ などを観察することにより,一般に, $$S_{2^k} \ge 1+\frac{k}{2}$$ が成り立つことがわかる.(もちろん数学的帰納法等でも証明できる) $\lim_{k \rightarrow \infty} 1+\frac{k}{2}=\infty$ なので, $$\lim_{k \rightarrow \infty} S_{2^k}=\infty$$ となり, $$\lim_{N \rightarrow \infty} S_N =\infty$$ が言える(*).

注意(*)

証明の最後の部分, $$\lim_{k \rightarrow \infty} S_{2^k}=\infty \Rightarrow \lim_{N \rightarrow \infty} S_N =\infty$$ が本当に言えるのか疑問に思う人がいるかもしれません.つまり,『数列 $\{S_N\}$ の部分列 $\{S_{2^k}\}$ が正の無限大に発散するからといって,もとの数列も正の無限大に発散するのか』という問題があります.結論から言えば,数列が単調増加数列 (数列 $\{a_n\}$ が単調増加数列とは,$i < j$ ならば $a_i \le a_j$ となること)であれば,これは成り立ちます.ただし,証明には大学 $1$ 年次で習う $N-\delta$ 論法を用いるので,ここでは省略します.

一方で,単調増加数列とは限らない数列については成り立つとは限りません.たとえば,数列$\{a_n\}$ を $$a_n=n(-1)^n$$ で定め,その部分列を $a_{2n}$ とすると,$\{a_{2n}\}$ は正の無限大に発散しますが,$\{a_n\}$ は正の無限大に発散しません.

さらに発展した話題

注意: この節では,高校数学では習わない事実を用いています.

調和級数をつぎのように一般化させた級数を考えましょう. $$\zeta(s)=\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s}$$ これは,ゼータ関数と呼ばれ,数学において,非常に重要な関数です.本来は $s$ は複素数の範囲にまで拡張できるのですが,今回は,$s$ を実数に限定して,ゼータ関数の収束・発散を議論します.ここでの目標は次の定理を証明することです.

$s$ を実数とする.このとき,次が成り立つ. $$\large s \le 1 \Rightarrow \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s}=\infty$$ $$\large s>1 \Rightarrow \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s} \text{は収束する}$$

証明: 
$\underline{\large (\rm{i})  s \le 1 \Rightarrow \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s}=\infty}$

$s \le 1$ のとき,$0 \le n^s \le n$ が成り立つ.したがって, $$\frac{1}{n^s} \ge \frac{1}{n}$$ であるから, $$\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s} \ge \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n}=\infty$$ である.よって, $$\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s}=\infty$$
$\underline{\large (\rm{ii})  s > 1 \Rightarrow \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s} \text{は収束する}}$

$S_N=1+\frac{1}{2^s}+\frac{1}{3^s}+\cdots +\frac{1}{N^s}$ とする.

明らかに,$S_N$ は単調増加数列である.

つぎに,$S_N$ が上に有界であることを示す.
$y=\frac{1}{x^s}$ のグラフを考える.→補足において,$N-1$ 個の長方形の面積の総和と,$x$ 軸,$x=1,x=N,y=\frac{1}{x^s}$ で囲まれた面積を比べると, $$S_N-1 < \int_1^{N} \frac{1}{x^s} dx$$ が成り立つ.これより, $$S_N < 1+\left[\frac{x^{1-s}}{1-s}\right]_1^N=1+\frac{N^{1-s}-1}{1-s}$$ $$< 1-\frac{1}{1-s}=\frac{s}{s-1}$$ よって,$S_N$ は上に有界である.

有界な単調数列は収束するので, $$\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s} \text{は収束する}$$


補足


注意

有界な単調数列が収束することは,大学1年生の微分積分学で習う内容です.微積分学では,この命題を公理として採用し,実数論を展開していくのです.